教科書採択問題「ゴネ得」許せば教育歪む
教科書採択問題で沖縄県教育委員会は、竹富町が石垣市などとの共同採択から離脱することを認めた。地域の教育事情を無視した決定であり、看過できない。
竹富町は石垣市、与那国町と3市町で八重山採択地区協議会をつくり、教科書を選んできた。
しかし、平成23年夏の採択で、協議会が中学公民教科書に育鵬社版を選んだ答申に従わず、24年春から東京書籍版の使用を強行している。
義務教育の教科書を小規模教委が共同で採択するルールを定めた教科書無償措置法に反し、地方自治法で最も強い是正要求が竹富町に出されている。法に従うのが当然だろう。
昭和30年代後半に無償措置法が導入されて以降、採択地区協議会の答申に従わなかった例はない。平成17年に茨城県大洗町が協議会の決定と異なる扶桑社版の中学歴史教科書を使おうとしたが最終的に共同採択のルールに従った。
沖縄県教委は違法状態を是正しようともせず、採択地区の区割りを変え、竹富町単独採択を認めるという。県教委は「これで混乱は終息に向かう」などとしている。文部科学省は県教委に遺憾の意を伝え、復帰の検討を求めた。
採択の際には教科ごとに多くの教科書の内容を調べ、資料をつくる調査研究の負担も多い。共同採択は効率的な教科書の配布ができるほか、教員の共同研究などでもメリットは大きい。
竹富町が離脱して別々の教科書を使うことで、教員人事異動の際の学習連携など、授業に支障がでることも心配されている。
竹富町の役場が石垣市内(石垣島)の港近くにあることからわかるように生活や文化圏は一体だ。教員人事も八重山採択地区で連携して行われてきた。支障は竹富町だけの問題にとどまらず、石垣市も同町離脱に反対している。
沖縄県教委も、竹富町が八重山採択地区にいることが本来は自然だとしてきた。
だが、離脱を認めた県教委は「教育行政の効率、地域の教育事情などを客観的、総合的に検討した」とコメントした。これでは説明になっていない。
教科書採択には公正さが強く求められる。ゴネ得を許す違法状態の追認は、教科書を適正に選ぶ採択制度を歪(ゆが)め、教育への信頼を大きく損ねる。