反捕鯨活動はおかしい!
JBpress.ismediaグ市慰安婦像撤去署名、欧米に伝わり始めた慰安婦問題の矛盾~
西村幸祐氏×トニー・マラーノ氏
マット安川 来日した“テキサス親父”ことトニー・マラーノさんと、トニーさんの新刊を監修した評論家・西村幸祐さんをお迎えして、日米関係やアジア情勢など、広くお話をうかがいました。
サムライとバイキングの末裔でシー・シェパードに対抗しよう

ジャーナリスト、作家。音楽雑誌編集などを経て、主にスポーツをテーマに作家、ジャーナリストとしての活動を開始。『幻の黄金時代 オンリーイエスタデイ'80s』(祥伝社刊)など著書多数。
トニー・マラーノ氏(左)
「テキサス親父」のニックネームで知られる米国の作家・評論家。動画サイトや新聞、雑誌での評論・執筆活動中。近著に『テキサス親父の「怒れ! 罠にかかった日本人」』(青林堂)。
(撮影:前田せいめい、以下同)
西村 トニーさんはもともと日本のことに特に関心を持たない、ごく一般的な米国人だったんです。ところが、シー・シェパードのやっていること(反捕鯨活動)はおかしいんじゃないかということに気づき、地元の新聞に投書したりしたけれど、なかなか取り上げられない。それでYouTubeで自分の番組を作ったというのが活動の始まりです。
マラーノ 多くの米国人がシー・シェパードのことをよく知れば、ちょっとおかしいということになると思います。日本のメディアもそうでしょうけど、米国のメディアはリベラルな方へどうしても行ってしまう。そして理論ではなく感情にすごく走りやすい。イルカはかわいいとかですね。
シー・シェパードがなぜ日本をターゲットにしたかというと、日本人は受動的で、親切で、あまり反撃しないからです。そういうものを利用するというのが、彼らにとってはやりやすい方法なんです。
彼らは現在、フェロー諸島でも反捕鯨活動を行っています。フェロー諸島はとても小さな島国(デンマークの自治領)で、島民はバイキングの子孫です。
そこで私はいま、日本のサムライとフェロー諸島のバイキングの子孫が組んで、シー・シェパードをやっつけようじゃないかと考えています。スポンサーの問題などがあるでしょうが、そういうことを考えているところです。
とはいえ、シー・シェパードに対しては感謝していることもあります。シー・シェパードの問題を扱ったことによって、自分が日本とこういういい関係を持つことができましたからね(笑)
お互いを尊重するという日本の文化は素晴らしい
西村 トニーさんはイタリア系米国人で、ニューヨークのイタリア人街で育っています。私はそういうところも日本人と打ち解けていった理由があるのかなという気がしています。アングロサクソンじゃないというところがですね(笑)
マラーノ 私の祖父母は4人ともイタリアからの移民です。私は2006年に会社を定年退職して、普段は庭の手入れや、教会の世話人のようなことをしています。YouTubeに動画を上げ始めてからは、いろんな人からメッセージが来るので、その返信などでほとんどの時間が使われていますが、非常に楽しんでやっています。
「テキサス親父」という名前は、日本の方につけていただいたものです。自分で名乗ったわけではありません。私はもともとブルックリン育ちのニューヨーカーですが、テキサスに長く住んでいますし、「テキサス親父」という名前をとても気に入っています。
マラーノ 実は、私が日本を好きになったのは、子供の頃の経験もあります。私が育った1950年代のイタリア人街では、他人を尊敬するという文化がありました。しかし、ここ40年くらいで米国の文化はゴミのようになってきたと感じています。
ところが、50年代のブルックリンにあった文化が、日本ではいまでも残っている。お互いに敬意を示すという日本の文化は素晴らしいもので、だからこそ私は日本が好きなんです。
もっとも、私も根底にあるものは同じだけど、日本人とはちょっとだけ違うのは、イタリア系なのでとても感情的だし、叫ぶし、言いたいことをどんどん言うことです(笑)
慰安婦像の撤去を求める署名活動に米国人や欧州人も賛同
西村 このほどトニーさんが中心になって、グレンデール市(カリフォルニア州)に設置された慰安婦像の撤去を求める請願をホワイトハウスに出しました。
請願が受理されるには10万人以上の署名が必要で、昨年その話を聞いた時には、期間も短いし、10万人は難しんじゃないかなと思っていたんですが、トニーさんが呼びかけたらわずか2~3週間で集まった。通常、ネットの署名というのはなかなか集まらないんですよ。1万人集めるのだってたいへんなことですからね。
マラーノ 私は署名活動を始めましたが、活動が成功したのは、みなさんのチームワークのおかげだと思っています。多くの日本人が協力してくれ、署名してくれました。署名は日本人だけではなく、その中には米国人やヨーロッパ人もいます。
西村 いま初めて知ったんですけど、米国人やヨーロッパ人の署名も多かったというのは驚きですね。いいことだと思います。理解が広まるんじゃないですか。何が起きているんだろうと思って、調べて、納得した人が署名するわけですから。
いままでまったく興味がなかった米国人やヨーロッパ人にまで情報が伝わるというのは、署名活動をやった効果だと思います。
マラーノ 実は、慰安婦問題、グレンデールの像などについて私はあまり心配していません。なぜなら米国は3億3000万人の人口がいますし、現時点で米国内で韓国人や中国人がやっていることはあまり大きなことではないからです。
米国の対中姿勢に変化の兆し、態度を硬化し始めた

西村 米中が接近していることについては、しょうがないというか、この10年以上の経済的な流れで、近づかざるを得なくなっています。
実際、オバマ政権は中国べったりです。今回もオバマ大統領は国賓待遇で来日したけれど、夫人のミシェルさんは同伴しなかった。夫人はその直前に北京に1週間もいました。それはオバマ大統領の親族が中国でビジネスをやっているということとも関係があります。
ただ、はっきりしているのは、米国の態度が昨年10月から少し変わったということです。というより変えざるを得なかったんです。ヘーゲル国防長官やケリー国務長官が、中国に対して正面を向いて言うべきことを言い出した。
それはフィリピンなどが侵略の危機にさらされ、悲鳴を上げているということもあります。そういう意味では、米中は近づきすぎているとはいえ、そうではない部分も出てきています。
マラーノ ニクソン大統領以来、米国の政権は中国との関係をある程度きっちりやっていかなければいけないということで一貫していると思います。経済関係でお互いがだんだん近づくことによって、それが戦争を抑止することにもつながる場合があります。
ただ、米中関係を短期間で考えるのは問題があります。中国自体はそんな短いスパン、15年とか20年ではものごとを見ていない。100年、200年、300年というレベルで考えている。ですから、我われが生きている間には悪影響はあまりないかもしれないけれど、我われの子孫の時代には問題が起きるかもしれません。
日米が過去は過去としておき前進しているのは美しい
マラーノ 第2次世界大戦での原爆投下については、非常に難しい問題で、話をすると長い時間がかかります。短く言うならば、お互いにひどいことをやった、死闘を繰り広げたけれど、それを教訓に今後こういうことを起こさないようにすべきではないかと思います。
米国と日本の美しいところは、そういうひどい死闘を繰り広げたにもかかわらず、お互いに過去は過去のものとしておいて、次に進んでいるところだと思います。
西村 硫黄島では毎年、日米合同で慰霊祭をやっていますしね。