【国防最前線】
国家公務員の給与制度の総合的見直し 第一線で体を張る自衛官に影響
離島防衛のため、米グアムで実動訓練を行う陸自隊員
自衛官の給与については、これまでも何度か書いてきた。だが、実は1つだけあえて触れなかったことがある。今回、その部分も含めて明らかにしたい。
まず、この4月まで2年間にわたり、国家公務員の給与は東日本大震災の復興目的で7・8%削減されていた。それが、やっと戻ったわけだが、ここに来て今度は人事院が「給与制度の総合的見直し」を行おうとしているという。
これは、民間の給与よりも国家公務員の方が高い地域があるため、その地域を基準に、全員の基本給を引き下げる。さらに50歳代後半の給与を下げるというもの。
復興財源措置の際もそうであったように、これが実行されれば、自衛隊員や海上保安官といった地方の第一線で体を張っている人たちへの影響が大きいということは、あまり知られていない。
沖縄県・尖閣諸島周辺で中国船と対峙している海上保安官、人里離れた山奥で24時間日本の空を守っているレーダーサイトの空自隊員、国境の町で警備にあたっている陸自隊員、何日も潜水艦の中で勤務し家族に居場所も言えない海自隊員…。みんな給与が削減されかねないのだ。
「公務員がそれくらいするのは当たり前」
世間ではどうしても、国家公務員=霞が関の官僚と思いがちである。しかし、こちらは確かに全国に職場があるとはいえ、全体の8割近くに地域手当が支給され、うち4人に1人は18%の最高額が付く東京勤務だ。
今回は基本給を引き下げる一方、この地域手当は増額される見通しで、これでは田舎勤務の公務員は、東京の公務員のために減給される構図になってしまう。
国家公務員をめぐる改革をして「霞が関が身を切る努力」と思っている日本人が多い。だが、実際に苦労を引き受けるのは、全国を転々として国防に身を捧げている人々であるということはかねて述べてきた。
しかし、霞が関組には残業代もあり、手当ても潤沢であることまでは言及してこなかった。霞が関の人たちを責めることは決して本意ではないからだ。深夜まで身を粉にして働いている人たちを批判する理由は何もない。
ただ、再三、訴えているのは、国民が自衛隊の処遇についてほとんど知らない現状ではマズイということだ。いくら、日本の防衛力を強化するなどと言っても、虚しいのである。自衛隊という自ら物言わぬ組織については、政治や国民がしっかり見ていく必要がある。
(ジャーナリスト・桜林美佐)