2年後 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 

国民の憲法1年
2年後の同日選挙で改憲実現を 日本大学教授・百地章




 憲法改正国民投票法の改正案が、連休明けの8日、衆議院憲法審査会において賛成多数で可決される見通しという。

 ≪テーマある程度絞り込め≫

 自民党の船田元・憲法改正推進本部長(当時代行)は年初、「通常国会の前半で決着をつけ、後半から憲法改正の中身について、どこから改正を始めるかという話を他党としたい」と意欲的に語っており(毎日新聞、1月11日付)、本格的改憲論議を期待したい。

 ここまで来た以上、改憲テーマについては優先順位を定め、何点かに絞り込んでいくべきだろう。基準の一つは、国家的に重要な課題であって緊急性を要すること、そして国民多数の支持が得られそうなもの-である。真っ先に考えられるのは、いつ発生するか分からない首都直下型大地震に備え、憲法に緊急事態条項を定めることである。これなら国民の多数の支持が得られるであろう。

 また国家的重要性と緊急性でいえば、迫りくる中国や北朝鮮の軍事的脅威から尖閣諸島や沖縄さらに本土を守るため、憲法9条2項を改正して自衛隊を「軍隊」とすることもあげられよう。国民に分かりやすく説明していけば、必ず道は開かれるはずである。

 先の日米首脳会談において、オバマ大統領から尖閣諸島が日米安全保障条約の対象になるとの約束を取り付けたのは画期的だ。が、現実に集団的自衛権が発動されるかどうかは分からない。なぜなら、条約第5条は、日米両国が「自国の憲法上の規定及び手続に従って」行動すると定めているからだ。米軍の出動を担保するためにも、わが国が自ら尖閣諸島を防衛する覚悟を定め、身を以て実践していかなければなるまい。

 現在衆議院では憲法改正の発議に必要な議員がゆうに3分の2を超え、参議院でも潜在的には3分の2以上の改憲勢力が形成されているという。つまりこれまで憲法改正の前に立ちはだかってきた3分の1の壁は崩れ落ちようとしている。これを突破するためには相当な政治力が必要だろうが、国会の発議は時間の問題と思われる。

 ≪成否を決する国民投票≫

 ただ、懸念されるのが国民投票である。護憲派は10年近く前から、反対運動の対象を国民投票にシフトしてきた。たとえ国会で発議されても国民投票で否決してしまおうとの戦略である。

 「九条を守る会」は全国に7500以上あるといわれ、「マスコミ九条の会」などといった職域別の会も多数存在する。また、今年の3月には、左翼系学者、文化人らによる「戦争をさせない1000人委員会」が発足した。それに護憲派マスメディア等の影響もあって、憲法改正反対の声は増加しつつある。他方、改憲派の国民運動は遅れており、もし今国民投票が行われたら否決されてしまう恐れさえある。

 このような中で国民投票を行い改正を実現するためには、2年後つまり平成28年夏に想定される衆参同日選挙に国民投票をぶつけるしかあるまい。それによって保守勢力を国民投票に総動員するわけだ。というのは、もし単独に国民投票を行った場合、護憲派は必死になって投票所に足を運ぶだろうが、改憲派の動向は読めないからである。

 ≪トリプル戦略で勝利を≫

 とはいえ、今後2年間で憲法改正をといわれても、戸惑う向きは多かろう。しかし、国会の両院で3分の2を超える改憲勢力が結集できたのは、憲法制定以来はじめてであり、これ以上のチャンスはない。しかも、2年後の衆参両院選挙の結果は未知数である。となれば、この「黄金の2年間」をフル活用するしかなかろう。安倍内閣の手でまず景気を回復させ、国民の活気を取り戻し、高い内閣支持率の下で憲法改正に打って出る以外考えられまい。

 昨年暮れ、「自民 憲法改正へ本格化」の大見出しのもと、「自民党憲法改正推進本部では、国民投票法改正を経て16年〔平成28年〕に憲法改正の発議・国民投票にこぎつける日程案が浮上している」との新聞報道があった(読売新聞、平成25年12月31日付)。そしてこれを裏付けるように、2年後の改憲を目指した国民運動が現実に始動し出している。3月議会では、石川県を皮切りに千葉県、熊本県など計8県議会で憲法改正促進を求める意見書が採択されており、6月議会ではさらに多くの県議会で議決が行われようとしている。

 思い出してみよう。第1次安倍内閣では、それまでの積み重ねがあったにせよ、従来まず不可能と考えられてきた教育基本法の改正を成し遂げた上、憲法改正国民投票法を制定し、さらに防衛庁を防衛省に昇格することができた。それもわずか1年間である。

 であれば、憲法改正とてできないはずがない。第2次安倍内閣の下、この2年間をかけて憲法改正を実現し、日本再建の力強い第一歩を踏み出そうではないか。(ももち あきら)