「早く父に抱かせて」 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 

【北朝鮮拉致】「命賭けて協議を」「早く父に抱かせて」
国民大集会で被害者家族が訴えた思い。




国民大集会で立ち上がり、オバマ米大統領との面会などについて報告する横田めぐみさんの父、滋さん=4月27日、東京都千代田区の日比谷公会堂(大里直也撮影)


 北朝鮮による拉致被害者の早期救出を訴える国民大集会が4月27日、東京都千代田区の日比谷公会堂で開かれた。長年進展のない状態が続き、集会では「もう我慢できない! 今年こそ結果を!」というスローガンが掲げられた。全国から集まった被害者家族は拉致問題の全面解決に向けた政府の取り組みを求めた。

「北朝鮮にだまされるな」

 冒頭、田口八重子さん=拉致当時(22)=の兄で家族会代表の飯塚繁雄さん(75)があいさつした。最近の日本と北朝鮮の状況について、飯塚さんは「3月末に局長級協議が開かれ、さらに継続していくという動きになっている」と説明。「今後北朝鮮にだまされないような形で進めていかないといけない」と政府に求めた。

 集会では、4月17日に米ニューヨークで開かれた国連安全保障理事会の非公式会合で拉致問題について陳述した増元るみ子さん=拉致当時(24)=の弟、照明さん(58)が安保理の様子を報告。非公式会合では拉致問題を含む北朝鮮の人権侵害について討議が行われ、照明さんは「国連の一員である北朝鮮がこのようなひどい人権侵害をしているのを国連が許してはならないと申し上げた」と話した。

 北朝鮮の人権侵害をめぐっては、国連人権理事会が3月に北朝鮮を非難する決議を採択した。家族は今後、人権侵害について安保理で公式協議が行われ、安保理が北朝鮮に対し具体的な行動を取ることを求めている。ただ、安保理の常任理事国で北朝鮮と関係の深い中国は、国際刑事裁判所への付託について反対姿勢を明確にしている。

 照明さんは集会で、「日本は中国にお願いするのではなく、攻めていくべきです。圧力がなければ中国も動きません。その声を日本から発するべきです」と呼びかけた。

オバマ氏との面会「良かった」

 続けて、横田めぐみさん=拉致当時(13)=の父、滋さん(81)と母、早紀江さん(78)が、3月に実現しためぐみさんの娘、キム・ウンギョンさん(26)とのモンゴルでの面会、4月に訪日したオバマ米大統領との面会について報告した。

 滋さんはオバマ氏との面会で、めぐみさんが拉致されてから長い年月がたっていることを説明。オバマ氏は「私にも女の子が2人いるから、それは非常に人権が侵されているので何とかしないといけない」と答えたという。オバマ氏は面会で拉致問題解決に向けた協力を表明し、滋さんは「お目にかかってよかった」と語った。

 早紀江さんはモンゴルでのウンギョンさんとの面会の様子について詳しく報告。面会を希望した理由として、被害者家族の高齢化が進んでいることを挙げ、「一目会ってから。倒れるのはそれからと思っていた」と話した。

 モンゴルでは、ウンギョンさん一家との楽しい交流の一方で、北朝鮮側が設置したビデオカメラに向かって日本側の主張を話す場面もあったといい、「何ともいえない緊張があった」と振り返った。

「憲法改正し、モノいえる国に」

 集会では、全国から集まった家族が次々とマイクを握り、拉致問題解決への思いを訴えた。

 有本恵子さん=拉致当時(23)=の母、嘉代子さん(88)はこの日、体調を崩して集会を欠席した恵子さんの父、明弘さん(85)の思いを代弁。「主人は憲法を改正してしっかりモノをいえるような国にならないと拉致問題は解決しないといっている。憲法改正にどうぞご協力ください」と呼びかけた。

 日本政府の対北朝鮮政策について要望を行ったのは、田口八重子さん=拉致当時(22)=の長男、飯塚耕一郎さん(37)。まず、平成14年の日朝首脳会談で北朝鮮が行った「(拉致被害者)8人は死亡した」という説明を白紙に戻すという前提で交渉することを求め、さらに北朝鮮が被害者の帰国につながる行動をしない限り、日本が制裁解除などの行動をしないよう訴えた。

その上で、「この交渉は核やミサイルの交渉とは違う。われわれの家族の命がかかっているんです。それほどの緊張感と命をかけ、協議に従事してもらいたい」と求めた。

母が見守っている

 年々高齢化が進む被害者家族の現状を切々と訴える姿も見られた。市川修一さん=拉致当時(23)=の兄、健一さん(69)は今年3月で父、平さんが99歳になったことを挙げ、「父の顔を見ると、涙が出て『早く胸に(修一さんを)抱かせてやらないといけない』と胸がつまる」と話し、「被害者全員が祖国の土を踏むまで皆さんの力をお貸しください」と支援を呼びかけた。

 今年1月に92歳で亡くなった松木薫さん=拉致当時(26)=の母、スナヨさんを看取った斎藤文代さん(68)はスナヨさんが亡くなる間際の様子を明らかにした。

 「母に最後、『もうお父さんのところにいっていいよ』というと、涙を流して安心したように『あとは頼むね』というような顔をして逝きました」。そう説明した斎藤さんは「母は見守ってくれていると思います」と墓前に薫さんら拉致被害者の帰国を報告できるよう、一日も早い解決を誓った。

 集会には約1500人が参加。最後には全員が立ち上がって、被害者の早期帰国を訴えた。