高齢化 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 

【島が危ない 第2部 佐渡に迫る影(4)】高齢化
「農業も外国頼み、トキと同じ」



佐渡に広がる水田にはトキも姿をみせる。農業の担い手不足が深刻な課題だ=新潟県佐渡市(大山文兄撮影)


 新潟県・佐渡島の地形は3つに大別される。北に大佐渡山地、南に小佐渡山地が連なり、その間に国中平野が広がる。この平野は古くから水田開発が進み、大穀倉地帯を形成してきた。年間2万トン程度の「佐渡米」を島外に出荷している。

 この佐渡米の生産量が先細りとなっている。平成18年は2万6300トンだったが、24年には2万1200トンにまで減った。

 原因は農業従事者の減少と高齢化だ。18年に5979戸だった生産農家は、24年に4767戸に減少。自営農業を主な仕事にしている「基幹的農業従事者」の平均年齢は21年で70・4歳となっている。

 「最盛期の田んぼの面積を100とした場合、今は60ぐらいしか残っていない」。元農協職員で農業を営む臼杵多喜雄さん(72)は嘆く。高齢化で耕作できなくなった農家が放置した田が増えているという。

   ×   × 

 臼杵さんによると、こうした状況を打開するために増えているのが、まだ元気な農業者が他の農家からの委託を受けて営農する生産組合だ。臼杵さんは7人で生産組合を立ち上げ、26世帯分の17ヘクタールを耕作している。

 「高齢で耕作できないし、かといって後継者もいないという農家が増えている。地域の平均年齢は70歳。みんな、いつどうなるか分からない。みんなで集落の田んぼを守っていこうと、有志を募って組合をつくった」

 だが、この生産組合にも限界が見え始めている。臼杵さんは顔を曇らせる。「最初は7人で始めたが、比較的若い60代の人が病気で倒れてしまって、今は6人。その中でも2人は80歳を超えている。何年か後に、全員亡くなってしまったら、土地はどうなるのか」

 地元の事情に詳しい元県議の清野正男さん(64)も、こうした組合は近い将来に行き詰まるとみている。「今の耕作者の年齢を考えると、5年という年限がみえている。農業の未来を考えるには時間がない」

   ×   × 

行政も手をこまねいているわけではない。佐渡市はさまざまな施策で農業を復活させようとしている。

 市は、佐渡独自で農家の所得補償を実施し、国の施策とは別に10アール当たり年間約2万円を補償。また、島内外を問わず、農業に関心のある人に、農地や農業機械、施設を提供して新規就農者を募集する制度を創設した。本土の企業に大規模な土地を貸与して農業経営を引き受けてもらい、地元住民が農作業に従事するという新しいモデルの仲介も始めた。

 甲斐元也市長は「それぞれ効果が出てきている。ただ、この5年が勝負。UターンやIターンを呼び込んで活路を見いだしたい」とさらに対策を強化していく考えを示した。そして、中国人観光客に期待する観光業と同様、中国との連携にも積極的な姿勢をみせる。「中国の駐新潟総領事との間で、中国にペットボトルの水と米を売ろうと相談したこともある」

 さらに市の農林水産課の担当者は、農地を提供する制度の適用条件や大規模農業経営の引き受け手について「海外からの進出は想定していない」としながらも、「資本規模や計画、信頼性などを見て、妥当だと判断すれば、受け入れはあり得るかもしれない」と海外との提携の可能性も示唆した。

 さまざまな施策で農業再生を急ぐ佐渡。新潟県のある地方議員経験者は「中国から提供されたトキと同じように、農業も外国の力に頼らざるを得なくなるのでは」と不安を口にした。(宮本雅史)