【国境の島を守れ!!】
存在感増す自衛隊 安全保障と経済効果の「一石二鳥」
ZAKZAK 夕刊フジ国境の島で、自衛隊の存在感が増している。石垣島(石垣市)に3月31日、海上自衛隊の練習艦隊が初寄港し、約800人の自衛官が島を訪れた。住民主催の歓迎セレモニーが開かれ「国の安心、安全をしっかり守ってほしい」と自衛官を激励する声が上がった。
この時期の練習艦隊寄港は、市の行政区域である尖閣諸島周辺で領海侵犯を繰り返す中国ににらみを利かせる効果がある。同時に、大勢の自衛官が島を訪れて宿泊したり、お土産を買ったりすることで、島の経済が潤う。
安全保障と経済効果の「一石二鳥」。その期待がさらに切実なのは、日本最西端の島、与那国島(与那国町)だ。
「自衛隊配備が与那国に有益だと理解してほしい」
今年2月、与那国島で開かれた自衛隊配備の住民説明会で、外間守吉町長が呼び掛けた。
与那国島は尖閣から約150キロの距離にあり、石垣島と並ぶ戦略的な要地だ。過疎化で現在の人口はわずか1500人台。町は自衛隊配備による経済効果に島の再起をかける。
賛否両論はあったが、いよいよ4月19日に駐屯地の着工式典が開かれる。町は将来のまちづくりに向け「基地と共存できる島」というコンセプトを打ち出した。
与那国島に配備されるのは陸自の沿岸監視部隊だが、石垣島では、有事に対処して初動を担当する警備部隊の配備が取り沙汰される。地元マスコミは「観光の島に軍備はいらない」と猛反対の構えを示している。確かに石垣島には、自衛隊に頼らなくとも経済振興を図れるポテンシャルがある。
沖縄本島では米兵の事件事故が最大の社会問題だ。米兵の犯罪者は日米地位協定で権利が守られ、最悪の場合は国外に逃亡する。県民の不平等感は強い。これを解決するには、日米同盟を維持しつつ、将来的に、米軍を沖縄から段階的に撤退させるほかない。
米軍に頼らず、中国に対する抑止力を、自衛隊が自ら担うことが理想だ。国家公務員である隊員が事件事故を起こせば、免職を含む重い処分が下る。米軍のように綱紀が緩む心配はない。
つまり沖縄の米軍基地負担を抜本的に解決するには、日本が「自主防衛」という本来の姿を取り戻すほかない。国境の島の自衛隊には今後、住民が真に頼れる姿を見せてほしい。
■仲新城誠(なかあらしろ・まこと) 1973年、沖縄県石垣市生まれ。琉球大学卒業後、99年に石垣島を拠点とする地方紙「八重山日報社」に入社。2010年、同社編集長に就任。同県の大手メディアが、イデオロギー色の強い報道を続けるなか、現場主義の中立的な取材・報道を心がけている。著書に「国境の島の『反日』教科書キャンペーン」(産経新聞出版)など。