倉山満氏“滅亡国家”日本正常化へ「守るべきものは何か」提唱
ZAKZAK 夕刊フジ倉山満さん
「日本はすでに滅んでいる」-こんなショッキングな指摘をするのが、気鋭の憲政史研究家の著者。でも、「日本をよくしたい」国民が、本書で真の「保守とは何か」を学び、日本の守るべきものを守れば、「まだ滅亡をまぬがれる道はある」と話す。 (文・幾田進 写真・剣持和政)
──執筆のきっかけは昨年10月の安倍晋三首相の消費増税発表だとか
「アベノミクスでせっかく景気回復が軌道に乗り始めているのに増税していいことは一つもありません。安倍首相は日銀を掌握できたが、肝心なところで財務省増税派には押し切られてしまった。これは対米開戦のときと同じで、世間の空気が形成されると同調圧力が起きて誰もあらがえないのです。支那事変も片付かないのに対米戦争に踏み切るなんて、誰が見てもおかしい話ですが、正論が通らない体制でどんどん滅亡の道に突っ込んでいった。たかが増税も阻止できずに、“戦後レジームからの脱却”を語るなかれ、の思いで書いたのがこの本です」
──これでは日本再興戦略はおぼつかない
「前回の2%の増税では自殺者が1万人増えました。今回はそれを上回る増税ですから、経済的に傷んでいるロスジェネ世代を直撃すると思います。たかが経済ですが、その経済がよくならなければ、日本は“敗戦国”から脱却できません」
──日本はいまだに敗戦国のままで、それどころか既に滅んでいるとも書いてますね
「保守とは何かを書くにあたり、その反対を“滅亡”であると定義し、それには8段階あるとしました。詳細は本書をお読みいただくとして、今の日本は形式上は主権国家ですが、事実上はアメリカの占領下のままです。そこで日本の社会はかつては米ソ、いまは米中、つまり親米派と親中派に分かれて代理戦争をしている状態です。もはや主権国家の体を成しておらず、つまり滅んでいる。それを自らの手で正常な状態に戻すのが“保守”ということです」
──では、何を保守するのでしょう
「日本の歴史と文化と伝統、人をおもんぱかる日本人らしさです」
──そのために大事なことはなんですか
「財政と外交と憲法ですね。財政についてはすでに述べました。外交とは明治の志士たちが外国の支配を受けないために心を砕いたような、外国の脅威から身を守ることです。領土はもちろんですが、現在の日本の急務は拉致被害者の奪還です。国は本来、そこに力を注がなければなりません。そして、最後にマッカーサーに押し付けられた憲法の見直しです。ただ、いま行われている憲法改正論議は無意味です。現行憲法の条文をいじくっても問題は解決しない。大日本帝国憲法に立ち戻って論議しなくては、真の敗戦国脱出はできません。ですから私の次回作は大日本帝国憲法というタブーについて書き、本気で日本を変えたいと思っています」
■あらすじ 学校では教えてくれない「保守入門書」。安倍首相の靖国参拝では、反日姿勢を鮮明にする中韓はもとより、アメリカまでもが批判的。北朝鮮、ロシアも含め、まさに四面楚歌(そか)の日本はどうする? その答えが本書。自らの力で「敗戦国」から脱し、「成熟した保守」を築きあげねばならない。そのために憲法、財政、外交など、国民が最低限知っておくべき“常識”を、ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の著者が解説する。
■倉山満(くらやま・みつる) 1973年、香川県生まれ。憲政史研究者。96年、中央大学文学部史学科卒。同大学院博士前期課程修了。国士舘大学で日本国憲法の教鞭(きょうべん)をとる。『嘘だらけの日米近現代史』『嘘だらけの日中近現代史』『嘘だらけの日韓近現代史』(いずれも扶桑社)の3部作は累計21万部突破のベストセラー。ブログ「倉山満の砦」、コンテンツ配信サービス「倉山塾」で大日本帝国憲法講義や言論活動も。
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