【誇れる国、日本】米の国力低下で中国は強硬姿勢に
ZAKZAK 夕刊フジモスクワ郊外の公邸で会議に臨むプーチン露大統領(AP)
プーチン大統領率いるロシアがウクライナ南部クリミア自治共和国の実効支配を強めるなか、オバマ米大統領の対応が注目されている。クリミア自治共和国では16日にロシア編入の是非を問う住民投票が行われる、弱腰批判もあるオバマ氏は追加制裁も辞さない構えというが…。
そもそも、ウクライナはかわいそうな国だ。
1920年代と30年代には大飢饉にさらされ、400万~1000万人が亡くなったとされる。第2次世界大戦の独ソ戦では激戦地となり、500万人以上の死者を出し、86年にはチェルノブイリ原発事故が発生した。苦難の歴史を刻んできた。
プーチン氏がソチ冬季五輪で強硬策を取れない時を狙ったように、ウクライナの2月政変は起こった。親ロシアのヤヌコビッチ前大統領が放逐され、親EUの暫定政権が発足した。
五輪閉幕後の先月末、我慢できなくなったプーチン氏は「ロシア系住民の保護」という名目で軍を急展開し、クリミア半島を掌握した。同半島にはロシア黒海艦隊が駐留しており、絶対に手放せなかったのだ。
一方、米国は深刻な財政赤字問題や対テロ戦争の疲れから、国防予算を大幅に減額している。もはや、「2つの戦争を同時に戦う」という基本戦略を実行する力はない。シリアで一度決断した軍事介入を見送ったオバマ氏は今回、「プーチン氏には戦略があるがオバマ氏には何もない」(ボルトン元米国連大使)などと、保守派に揶揄されている。
近年、中国が沖縄県・尖閣諸島をめぐって強硬姿勢を強めたり、韓国が中国シフトを強めている一因として、米国の国力低下の影響がある。
ウクライナ情勢は日本にとって他人事ではない。
米国などの制裁発動が効かず、ロシアによるクリミア併合が実現すれば、中国は「東アジアでも力による現状変更が可能だ」と認識し、尖閣諸島への姿勢を強める可能性がある。
世界情勢は、日本が自ら国防力を高めて、東アジアの平和に責任を持つ時代の到来を示している。米国と協調しながら、集団的自衛権の行使を容認し、憲法改正をすべきだ。国防力は経済力で裏付けられる。日本は経済力を蓄えるべきだ。
プーチン氏は、天然ガスなどの供給でEUやウクライナを牽制している。エネルギーは強力な武器なのだ。日本は、戦略的視点でも多様なエネルギー源を確保しなければならない。停止中の原発を速やかに再稼働させて、拡大が続く貿易赤字を食い止める必要がある。
安倍首相は、自信を持って大局的見地に立ち、誇れる祖国日本の再興のために頑張ってほしい。
■元谷外志雄(もとや・としお) 石川県小松市生まれ。信用金庫勤務後、27歳で注文住宅会社を創業し、その後、ホテルやマンション、都市開発事業などを手がけるアパグループを一代で築き上げる。同グループ代表。国内外の多くの要人と交友関係があり、政治や経済、軍事に関する知識も豊富で、社会時評エッセーも執筆する。著書に「誇れる祖国『日本』」(幻冬舎)、「報道されない近現代史」(産経新聞出版)など。