連合国戦勝史観の虚妄。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 

【書評】『英国人記者が見た連合国戦勝史観の虚妄』


日本の主張を見事に代弁

 この本は昨年12月に発売され、はや5万部が売れた。日本が世界に発信したい主張が、英国人著者により見事に代弁されているからか。

 著者は、東京オリンピック開催の1964年に来日。当初はイギリスのフィナンシャル・タイムズ、その後、ザ・タイムズ、ニューヨーク・タイムズの東京支局長を歴任。「ジャーナリストとは、疑う能力だけが特技で、またそのように訓練された。事実を目にするまでは信じない」姿勢で、日本にアジア各国に真摯(しんし)に向き合った。その結果、三島由紀夫と信頼関係を築き、氏の行動の真意を最も理解した外国特派員となった。今年で在日50年。特派員最古参である。

 しかし、子供時代は、戦後のイギリスで圧倒的量で報道された「日本悪玉論」に洗脳された。「南京大虐殺」も長く信じていた。疑問を持つきっかけは、『「南京事件」の探求』(文春新書、2001年刊)の著者、北村稔立命館大学教授の講演だった。事実に目を開かされ、独自に調査した著者の結論は「情報戦争における謀略宣伝」だった。日本の保守派と呼ばれる人たちの「アジアを侵略したのは、イギリスでありアメリカ。日本はアジアを解放した」との主張に対しても「イギリスから見れば、大英帝国の植民地を侵略した日本だが、日本側には日本の主張があってしかるべき。日本の立場を敵国だったイギリスやアメリカは主張しない」と公平だ。

いや、“敵国”という言葉は彼らの感情を表すには不十分だ。日本軍が大英帝国を崩壊させたことは「人間-西洋人-の真似(まね)をしていた猿が、人間の上にたつかのごとき衝撃を西洋文明そのものに与えた」と言うのだから。この衝撃を根底に東京裁判があった。当時の関係者は、著者の取材に「法廷には恐ろしい気配が充満していた」と語る。

 東京裁判の全てが不法だったと論じる著者は、“感情”という事実にも向き合って真実を求める。それでもなお、「真実を報道するのは実に難しい」。ジャーナリストに、メディアが持つ巨大な力の自覚を促し、横暴さを戒める。(ヘンリー・S・ストークス著/祥伝社新書・840円)

 評・井口優子(評論家)