恥知らず「中国の“悪”夢」への道 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 



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産経ウェスト

恥知らず中国メディア論評
「PM2・5は人民の団結など5つの利益をもたらした」
…ネット上でも批判噴出



中国・上海で、大気汚染への注意喚起のためマスクを着用し、ポリ袋を被るパフォーマンスを演じる学生ら=2013年12月(ロイター)

1914年に創刊された総合学術雑誌「米国科学アカデミー紀要」(電子版)に今年1月、PM2・5(微小粒子状物質)に関わる研究結果が載った。中国で発生した大気汚染物質が米西海岸に達し、その汚染物質が携帯電話などの製造過程で発生しているという内容だ。米国から中国への「外注化」が汚染物質の大量発生の一因で、それが発注元にブーメランのように返ってきたことになる。一方で、中国ではPM2・5対策といいながらテロ警戒のため爆竹・花火の販売を規制。韓国は中国の顔色をうかがう…。大気汚染と中国をめぐる関係は、世界の「縮図」でもある。

呼吸困難「8億人超」…中国へ「外注化」が招いた?

 米CNN(電子版)によると、アカデミー紀要に掲載された研究は、米カリフォルニア大や北京大などの教授らが共同で研究・発表した。

 まず中国での大気汚染物質が米西海岸にまで到達していたと分析。人類が発生させている二酸化硫黄の36%▽酸化窒素の27%▽一酸化炭素の22%▽黒色炭素17%-が中国から輸出される製品製造のために放出されているとした。黒色炭素は化石燃料の燃焼で発生し、がんや肺気腫、喘息(ぜんそく)などの疾病の発生原因とされる。

 さらに米国で使われる携帯電話やテレビは中国で生産されることが少なくないと指摘。その上で、中国の輸出製品製造で発生した大気汚染物質のうち約21%が、中国から米国への輸出にかかわっているとした。

要するに、米西海岸へのPM2・5などの飛来は、中国にこうした製造業を集めて「外注化」したことが一因になっているという論旨だ。研究にかかわった1人はこう指摘している。

 「大気汚染物質の越境を減らすための国際的な協力を考えるとき、ある国で商品が消費される間、別の国で放出されている大気汚染物質に対し誰が責任があるのかという問題に直面せざるを得ない」

中古車7万台処分、爆竹・花火購入は記名制…対策躍起の中国当局

 「別の国」である中国では、国営新華通信のウェブサイトは昨年末、2013年を振り返り、PM2・5を含む大気汚染について「8億人余りが呼吸すら困難となった」と評したが、当局側はいまもその対策に躍起だ。

 上海市は今年1月、排ガス基準を満たさない旧式の自動車約7万台の処分を進める方針を明らかにした。同市は17年までにPM2・5の平均濃度を12年に比べ20%削減する方針だ。北京市などは、旧正月に当たる春節で欠かせない爆竹や花火の自粛を呼びかけ、その結果、販売量が4~5割減少したという。

 このほか、中国遼寧省は昨年12月、条例に基づき、大気汚染の基準値を超えたとして瀋陽市など8市に罰金計5420万元(約9億3千万円)を科した。

 ただ、爆竹や花火をめぐっては“中国らしさ”の一端も明らかになっている。

 中国メディアによると、中国新疆ウイグル自治区の区都ウルムチ市が、春節中の爆竹や花火3箱以上の購入者に限っていた従来の登録制を厳格化し、全購入者に実名登録を義務づけたのだ。

これは「テロ活動」への転用を阻止するための措置ともみられている。

PM2・5の飛来源の5割は中国

 一方、PM2・5について、韓国メディアはたびたび報じているが、公的機関の取り組みに真摯(しんし)さは感じられない。

 中央日報によると、ソウル市開発研究院が08~10年に大気汚染を調査したところ、PM2・5に対する中国の寄与度は49%で最も高かった。市は10年にこのことを把握していたが、一般に公表しなかった。同市が2000年代初期から毎年1千億ウォン(約96億円)を支出し、PM2・5の対策を施していたにもかかわらず、効果を上げられなかったため“隠蔽”したというのだ。発生源が中国であれば予算削減されかねないとの懸念が働いたという。

 ソウル市の環境担当者は中央日報に対しこう指摘している。

 「北京の中国公務員は粒子状物質の話を持ち出すだけで拒否反応を見せる」

 その結果、十分な対策がされず、“被害”を受けるのは国民だ。経済的な結びつきを強める中国の顔色を一番に気にする卑屈な態度。また、「反日」発言・行為を世界にまき散らしている現状と比較すると、実に対照的だ。

「中国の“悪”夢」への道

 PM2・5をめぐる問題は世界レベルで拡大している。実際には、中国からの越境汚染は飛来状況がよく分かっておらず、どの程度の影響があるかは不明だとされる。火力発電所や石油化学工場が集まる地域のほか、自動車の排ガスにも含まれるため、交通量の多い基幹道路でも数値が上がる可能性がある。

CNNは、インドの研究機関が、PM2・5禍による「世界最悪の汚染都市」はインドの首都ニューデリーだとする調査結果をまとめたことを報じている。これもPM2・5を含む大気汚染の問題が、開発が進む新興国などで深刻さを増していることを示している。

 中国の国営中央テレビ(CCTV)のウェブサイトは昨年末、ある論評を報じた。

 欧米メディアによると、論評では、大気汚染が「団結」「平等」「代価」「ユーモア」「知識向上」の5つの利益をもたらしたとした。大気汚染に立ち向かうために「団結」し、貧富の格差にかかわらず誰にでも降りかかるから「平等」で、経済発展に伴う“痛み”を市民に意識させるという「代価」を支払い、さらに困難な状況でも「ユーモア」を忘れず、気象や地理、化学などの「知識向上」も図れたというのだ。

 当然、インターネット上には批判が殺到した。

 「(周囲を)はっきりと見ることができないから、すべての欠点が隠され、誰もがより美しく見えるようになっている」

 「こんな恥知らずを聞いたことがない」

 習近平国家主席は「中国の夢」の実現を掲げているが、このままでは「中国の“悪”夢」の実現になりかねない。