【国防最前線】1・8%増の「中期防」予算
ここにも巧妙なマジック 実際は0・8%増
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20140116/plt1401160719000-n1.htm防衛予算の話の続きである。とにかく、この中にさまざまな経費が含まれているため、見かけの金額は大きいのに、実際に自衛隊が使えるものは「ほんの僅か」であると言って過言ではない。
予算の内訳を見ると、まず人件・糧食費が半分近くを占めており、そのほかに、歳出化経費(いわゆる装備品などのローン払い)、一般物件費、そして米軍関連予算が通常10%以上は含まれている。その中に、今年度は普天間飛行場移設53億円や、岩国への米軍空母艦載機部隊の移駐関連費用904億円に加え、グアム移転関連費も計上され始めている。
これが全て自衛隊のために使えれば…などと言いたいわけではない。仮に自国のみで防衛力を整備するならば、対GDP規模として今の3~5倍ほどは予算を割く必要があるだろうとも言われており、GDP比1%枠内の、この程度の負担だけで国を守れるのは「お得」だという見方が正しいのだろう。
しかし今後、米国が国防費を10年間で5000億ドル(約51兆円)削減するとしていることから、日本の防衛予算が米国の「金庫」のようになってしまわないか、注意を払う必要はありそうだ。
特に、やたらと米国から装備品をFMS(米国対外有償軍事援助)で購入することについては、これまで繰り返し述べてきたが、長い目で見て最も性質の悪い米国への奉仕である。「自衛隊が○○を導入!」といった今の熱狂が、将来日本の防衛基盤をガタガタにしかねないことを肝に銘じるべきではないか。
さて、年度の予算だけでなく、昨年末には今後10年間の防衛力の指針「防衛計画の大綱」(防衛大綱)と、それを達成するための5年間の事業内容となる「中期防衛力整備計画」(中期防)が閣議決定された。前中期防よりも1・8%増だと言われるが、こちらも防衛予算同様に巧妙な仕組みがある。
本文をじっくり読むと、この一文に目が留まる。
「調達改革等を通じ、一層の効率化・合理化を徹底した防衛力整備に努め、おおむね7000億円程度の実質的な財源の確保を図る」
つまり、24兆6700億円の総額から7000億円を差し引いた額が、リアルな中期防の金額なのだ。そしてそれは、0・8%増に過ぎない。
昨日も申し上げたように、そこに減額された給与が戻る分、消費増税分、円安による為替差損分が含まれることになる。
こうした見事な「マジック」が、またも繰り返されている。「騙される方が悪い」と言われればそれまでだが、見かけを取り繕って「増えた」と思い込まされるなら、ありのままを誠実に説明してもらった方がいい。
■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。