両陛下、慈しみの熊本ご訪問。
天皇、皇后両陛下は10月26~28日、「第33回全国豊かな海づくり大会」臨席のため、熊本県を訪問された。今回、初めて水俣市を訪れて水俣病患者らと懇談したほか、国立ハンセン病療養所「菊池恵楓園(けいふうえん)」(合志(こうし)市)も初訪問された。両陛下の熊本ご訪問は即位前を含めて6回目で、14年ぶり。
両陛下は以前からハンセン病や水俣の問題に心を寄せてこられた。昭和43年以来、全国のハンセン病療養所14カ所のうち11カ所を訪ねられており、菊池恵楓園は12カ所目。平成11年10月に第54回国民体育大会秋季大会臨席のため熊本を訪問した際には、陛下は宿泊先のホテルで水俣湾の環境について研究者らから説明を受けられ、皇后さまは菊池恵楓園の園長からハンセン病について話を聞かれた。
両陛下は26日午後、特別機で予定通り熊本入りされた。菊池恵楓園では、資料の説明を受けた後、同園で亡くなった入所者の約3分の1にあたる1288人の遺骨が安置される納骨堂で、白菊の花束を供えて深く礼をされた。
出迎えた入所者自治会の志村康会長代行(80)が、治療を終えて一時社会復帰していたことを説明すると、皇后さまは「いろいろとご努力があったんでしょうね。どうぞお元気でお過ごしください」とねぎらわれた。
両陛下は施設内の集会所で入所者や職員と懇談された。陛下は膝を曲げ、手を握って励まされ、皇后さまは両膝を床に付き、入所者に寄り添うように話を聞かれた。
両陛下は27日、熊本市内で開かれた海づくり大会式典に臨席後、九州新幹線で水俣市へ入られた。水銀を含むヘドロを埋め立てて整備した公園「エコパーク水俣」では、慰霊の碑に白菊の花束を供え、深く一礼された。
水俣病資料館では、水俣の海が水銀を取り除いて再生したとの説明を受けられた。両陛下はこれに先立ち、通所施設の水俣病患者2人を招いて約10分間、懇談された。宮内庁によると、両陛下が症状の重い患者との面会を希望されたという。
同資料館語り部の会会長、緒方正実さん(55)からは、病気に苦しんだ家族のこと、差別や偏見を恐れて水俣病から逃げていたことを悔いる話を聞かれた。これに対し陛下は、異例の長い感想を語られた=全文参照。
28日には、県庁で同県PRキャラクター「くまモン」の展示をご覧に。皇后さまがくまモンに「ごくろうさま。ありがとう、くまモンさん」と声を掛けられる場面も。両陛下はくまモンが繰り広げる「くまモン体操」もご覧になり、笑顔で拍手を送られた。
31日には、両陛下ご主催の秋の園遊会が東京・元赤坂の赤坂御苑で開かれ、プロ野球巨人終身名誉監督の長嶋茂雄さん(77)ら約1800人が出席した。皇太子さまをはじめ皇族方も臨席された。
皇太子さまは30日、金沢市のいしかわ総合スポーツセンターで開かれた「第16回全国農業担い手サミット」の開会式に臨席された。
天皇陛下のご感想全文
どうもありがとうございます。本当にお気持ち、察するに余りあると思っています。
やはり真実に生きるということができる社会をみんなで作っていきたいものだと改めて思いました。
本当にさまざまな思いを込めて、この年まで過ごしていらしたということに深く思いを致しています。
今後の日本が、自分が正しくあることができる社会になっていく、そうなればと思っています。みながその方に向かって進んでいけることを願っています。
東日本大震災の被災者を見舞うため、JR盛岡駅に到着された皇太子同妃両殿下=1日午後(代表撮影)
皇太子同妃両殿下は1日午後、東日本大震災被災地のお見舞い訪問で、岩手県に入られた。同日は盛岡市内にご宿泊。2日に釜石市に移動して、高齢者ケアにも取り組む仮設団地や、津波被害から再興した水産加工会社などを視察し、津波などで被災した人々を励まされる予定。
療養中の皇太子妃雅子さまが宿泊を伴う国内公務に臨むのは、平成22年1月の神戸市での阪神大震災追悼式典に臨席されて以来、約3年9カ月ぶりとなる。
新幹線で到着した盛岡駅から車に乗る際、皇太子殿下と雅子妃殿下は、集まった大勢の人々に向けて手を振られた。沿道にも人々が並び、岩手県警によると、計約1800人が集まったという。
同妃両殿下の岩手県ご訪問は23年8月以来、約2年3カ月ぶり。今年8月に宮城県を、9月には福島県を、それぞれ日帰りで訪問されていた。
東日本大震災の被災地お見舞いのため、福島県の伊達東仮設住宅を訪れた三笠宮家の寛仁親王妃信子さま=1日午後、福島県伊達市
寛仁親王妃信子さまは1日、東日本大震災の被災地お見舞いのため、日帰りで福島県伊達市を訪れ、全村避難が続く同県飯舘村の人たちが入居する伊達東仮設住宅などを訪問された。信子妃殿下はストレス性ぜんそくなどのため療養されており、約7年10カ月ぶりのご公務となった。同市立保原小学校では小学生らを前に「皆さんの元気な顔を見てうれしく思います。福島で新しいスタートを切れて感謝しています」と話された。