【中国という悪夢】
薄煕来氏裁判で習近平体制が隠した真実と思惑
“日本利権”も関係か。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20131001/frn1310010722000-n1.htm
元重慶市トップ、薄煕来被告に9月下旬、無期懲役の判決が下った。共産党指導部、もしくは司法当局の入れ知恵なのか、元バスケットボール選手の「巨人系警察官」に両脇を固めさせ、身長185センチ前後で手錠姿の薄被告を小さく、弱々しく見せる演出も忘れなかった。
かつて北京五輪の開幕式で、少女の「口パク事件」が世界で物議をかもしたように、中国は見た目にひどくこだわる社会でもある。
事実、権力の中枢に上り詰めるにつれ、共産党幹部の毛髪は加齢と逆行する動き=黒々と盛り上がる(増毛?)。そして、この度、テレビで映し出された薄被告の後頭部は、すでに権力を失った熟年男のソレだった。
「毛」の話はいいとして、同被告の罪状は収賄、横領、職権乱用。その判決を「不公正」と彼は叫んだが、確かにその罪なら、他の共産党幹部やその親族一同だって大同小異のハズなのだ。
では、なぜ薄被告がやり玉に挙がったのか。
1つは元部下の王立軍受刑者による米領事館への駆け込みと、亡命未遂事件に絡む「国家機密漏えい罪」の責任が考えられる。何より最大の理由は「政府転覆陰謀罪」だったと推測する。
毛沢東時代の悪夢、文化大革命という殺戮(さつりく)時代へ人民を誘導し、国内を機能不全状態にする可能性が高い“危険人物”を抹殺しなければ、共産党体制の崩壊につながりかねないからだ。
ただ、その罪状では国内外に向けた公開裁判は無理。ということで、手垢にまみれた腐敗撲滅キャンペーンの最中、象徴的な“裁判ショー”に仕立ててお茶を濁した。
冷静に見れば、習近平時代の滑り出しは、同じ太子党に属し、ライバル関係にあった薄被告が重慶市で燃えた「打黒(=腐敗や暴力団の一掃)」政策の受け売りだ。毛沢東を崇拝、毛語録を引用する点なども、両者の方向性は酷似している。
だが、カリスマ性のある薄被告は監獄へ、一見、ゆるキャラ『くまモン』的雰囲気ながら、どこに腹があるか分からない習国家主席がトップに躍り出た。皮肉なことに共産党の権力構造において、ポピュリズムこそが邪魔ってことなのだ。
さらにもう1つ、昨年9月は共産党政権が“反日暴動”を指揮、「尖閣諸島は中国の領土」キャンペーンに燃えたが、この度は日本の政財界と長年、太いパイプを構築してきた薄被告の「政治生命の終焉」報道に終始した。
新指導部は、日本利権をウハウハ得てきた男に我慢ならなかったのだろう。「日中関係リセット」のサインとも読み取れる。
■河添恵子(かわそえ・けいこ)
ノンフィクション作家。1963年、千葉県生まれ。名古屋市立女子短期大学卒業後、86年より北京外国語学院、遼寧師範大学へ留学。主な著書は「中国人の世界乗っ取り計画」「豹変した中国人がアメリカをボロボロにした」(産経新聞出版)、「中国崩壊カウントダウン」(明成社)など。