先日、たまたまテレビを見ていたら、なにやら暗い顔をした経済評論家なる人が出てきて、アベノミクスは必ず失敗するという。
なぜ失敗するかというと、意味のない公共工事などの財政出動をしても、国の借金が膨らむばかりで、国の経済はちっとも良くならず、むしろ通貨がダボついてインフレとなり、物価が上昇する。
庶民の暮らしはますます厳しくなり、政府の財政赤字も膨らむ。
だからいま必要なのは、むしろ消費税の増税なのだと言います。
ところがこの評論家さん、東京オリンピックについては、これは良いことだ。
7年後のオリンピック招致によって、新しい施設や都市インフラが進み、そのために政府は財政出動するから、国の景気は良くなり、人々の暮らしには明るさが戻るという。
番組をみていて、おもわず吹き出してしまいました。
アベノミクスによる財政出動は景気回復には何の役にも立たず、オリンピックのための公共事業の財政出動は国の経済を活性化させ、景気を良くするというのです。
言ってることが矛盾しています。
それなのに、オリンピックは景気回復効果があり、アベノミクスは景気を悪化させるという。
どっちなんだと、おもわず突っ込みをいれたくなります。
こんな矛盾したことを、平気で言ってのけていて、それでよく経済評論家が勤まるものだとかえって感心してしまいましたが、その後にこの評論家さん、「私は生活がたいへんなので、生活のためにこうした仕事をやっている」と述べたところで、ああ、なるほどと納得しました。
おそらくは、この評論家さん、経済の専門家だけに、実はちゃんとわかっている。
わかっているけれど、番組のプロデューサーの意向に添って、自分の意見とは異なることを言っているから、矛盾が出る。
けれど、それでギャラが稼げるのだからと、番組に出演しているのでしょう。
情けない話です。
国の借金、財政出動、アベノミクス、オリンピック招致、いったい何が正しくて何が間違っているのか、経済はむつかしくてよくわからないという人も多いです。
ねずブロでは、歴史を多く扱っていますが、実はもともとは私は経済が専門です。
そこで、わかりやすい経済について、ちょっと書いてみようと思います。
国の経済というと、なにやら難しいカタカナ用語やアルファベットがいっぱい出て来るので、それでどうしても、暗号の解読みたいな雰囲気になってしまうのですが、実は、根っこにあるのは、たいへんにシンプルなものです。
まずいまの経済の現状ですが、これはお店に例えると、わかりやすいです。
みなさんが、何かお店を経営していると想像してみてください。
そのお店は、飲み屋さんでも、ラーメン屋さんでも、プディックでも何でもいいです。
お店の営業時間が1日12時間、休日が月に6日で、月の営業日数が25日。
ということは、月300時間の営業時間ですが、それだけ店を開けて仕事をすると、月に300万円の売上があがっていたとします。
ところが世の中の景気が悪くなり、同じ時間営業しているのに、売上が200万円に下がってしまいました。
さあ大変です。
同じ時間、製品やサービスの提供をしているのに、所得(売上)が100万円も下がってしまったのです。
実は、このマイナス100万円の失われた所得(売上)のことを、「デフレギャップ」といいます。
同じだけ(300時間)製品やサービスの提供をしているのに、デフレギャップによって、売上が下がってしまったのです。
では、どうしたらよいのでしょうか。
売上が200万円に下がったから、では、月の営業時間を200時間に短縮したら良いのでしょうか。
つまり、製品やサービスの提供量そのものを減らすのです。
けれど、そんなことをしたら、余計に売上が下がり、ますますたいへんな事態になることは、子供でもわかる簡単な理屈です。
ところが、これをやってきたのが、バブル崩壊後の20年の政府の政策です。
公共投資を削り、歳費を削減し、公務員をリストラし、銀行は中小企業から課し剥がしをする。
談合を廃止して、価格入札一本にし、企業の利益を減らす。
景気がますます悪化する。
景気が悪化して税収が減るから、ますます歳費を削減する。
すると、世の中にますますお金がまわらなくなり、景気がさらに悪化する。
完全な悪循環です。
これを、デフレスパイラルと呼びます。
そんな状態で、さらに消費税を上げたらどうなるのでしょう。
もともと売上が300万あったのに、いまや売上が200万円。
そこから消費税として10%がさらに持って行かれる。
手元に残るのは180万円です。
どうやってお店のやりくりをするのでしょうか。
お客様に来ていただきたくても、そもそも景気が悪くて、世の中にお金がまわっていないのです。
いままでなら300万円の所得(売上)から、仕入れ代や従業員の給料、自分の給料が払われていたのに、そもそもの売上が200万円しかないのです。
仕入費や、従業員の給料を差し引いたら、もはや赤字です。
それなのに、さらに消費税を引き上げるという。
これでは日本経済は、完全に死んでしまいます。
そこで登場したのが、アベノミクスです。
民間にお金を使ってもらいたくても、もはやどうにもならないところまで景気が落ち込んでいて、民間には使えるお金がない。
ならば、政府が民間に変わってお金を使おうというわけです。
お店の売上が100万円も減ってしまったのです。
だったら、政府のお役人がお店に毎日来て、100万円分、お店で買い物や飲食をしてあげよう!というわけです。
売上がもとにもどれば、お金が回るようになります。
お店が混んできて、ついには、お店に行列までできてしまうようになるかもしれない。
そこで、こんなにお客様がたくさん来るならと、やむを得ず、お店の商品の値上げをします。
すると、これまでと同じ、月300時間の労働で、売上高が400万円に増える。
同じ製品やサービスの提供をしているだけなのに、今度は、売上高がぐーんと増えてしまうわけです。
これがインフレーションです。
そして、製品やサービスの提供以上に売上が増えすぎた分が、インフレギャップです。
いまの日本は、誰がどうみてもデフレなのです。
デフレでお金が回っていないなら、政府が積極的な財政出動をして、お金を世間にまわさなければなりません。
それが財政出動であり、デフレ対策というのは、これしか他に対策の打ちようがないのです。
これを上手にやったのが、実は、ヒットラーです。
ヒットラーといえば、誰もが悪の帝国主義者、悪の軍国主義者を思い浮かべます。
けれど、そういう「悪の~」とか形容詞を付けることで思考停止になるのは、いかがなものかと思います。
なぜヒットラーは、ドイツで政権をとるほどにまで、民衆から「ハイル、ヒットラー!」と諸手を挙げて称賛されたのか。
歴史は、先入観や決めつけではいるのではなく、謙虚に学ぶという気持ちを持つことで、さまざまな教えを得ることができます。
実は、ヒットラーがナチス党を結党した頃のドイツは、1929年にはじまる世界大恐慌の影響を受けて、ものすごいデフレ不況に悩まされていました。
その頃のドイツは、第一次世界大戦の敗戦国として、政府は毎年莫大な額の賠償金を、周辺各国に支払続けていたのです。
世界大恐慌で、国際的な大不況が襲い、ドイツ国内が不況のどん底に沈む中で、ドイツ政府は、賠償金を払い続けなければならない。
不況ですから、当然政府の税収は減ります。
国の赤字も膨らんでしまう。
そこで当時のドイツ政府は、思い切った財政削減を実施しました。
その結果何が起こったか。
なんと、ドイツ国民の失業率は、43%にまで増大してしまったのです。
43%です。
国民の二人に一人は失業者という、酷い状態になってしまったのです。
これは当然のことです。
デフレなのに、歳費を削ったのです。
月に300時間営業してるのに、売上が200万円に下がってしまったからと、営業時間を半分に短縮してしまったようなものです。
ますます国内にお金が回らなくなり、企業が次々と倒産、人々はお金を使わなくなり、その結果、ますます景気は悪化。
それでも政府は他国に賠償金を払い続けなければならない。
国内のインフラ整備や公共事業に使える政府のお金もなくなり、政府自体が倒産状態にまで至ってしまいました。
そんなときにヒットラーは、ナチス党を結党し、「優秀なドイツ国民がここまで不況にあえいでいるのは、政府が無能だからに他ならない。私に任せてくれれば、3年でドイツ国民の失業率を0%にしてみせる。私は誇りあるドイツ民族のために戦う。みなさんも一緒に私と立ち上がろう!!」と辻説法をはじめたわけです。
なにせ二人に一人が失業者です。
国民に仕事がないのです。収入もない。
そんなときに、全国民に仕事を!!と派手に打ち上げたヒットラーのナチス党は、国民的人気を集めました。
そして、ヒットラーは、なんと、政権をとるやいなや、公約通り、たった3年で、ドイツ国民の失業率をゼロにしてしまったのです。
何をして失業率をゼロにしたのかというと、有名な、制限速度ゼロの高速道路のアウトバーンを建設し、Uボートや、航空機を開発し、鉄道を敷設し、軍隊に大量雇用するなど、国のお金を使いまくったのです。
このためドイツは、不況にあえぐヨーロッパにあって、いちはやく不況から脱出し、ものすごい好景気を満喫しはじめました。
周辺国にしてみれば、自分の国がいつまで経っても不況を抜け出せず、ますます人々の生活が苦しくなる中で、ドイツだけが猛烈な好景気に見舞われ出したのです。
こうなると、ドイツにあやかりたい、むしろドイツのナチス党に、自分の国の経済をみてもらいたいと考える民間人が圧倒的に増えてきました。
ナチスドイツは、ポーランドやフランスに侵攻したといわれていますが、実際には、それぞれの周辺国の民衆が、むしろナチス党に来てもらいたいと願った。
その願いと行動が、周辺国の国王や政府にとっては、脅威に映ったというのが、実際の流れです。
では、どうしてヒットラーは、短期間で景気を回復させ、ドイツ経済を復活させることができたのでしょうか。
そしてなぜ、ヒットラーは、それを「やってもいないうちから」公約することができたのでしょうか。
実は、ヒットラーには、お手本があったのです。
そのお手本が、日本です。
日本の高橋是清財政が、世界大恐慌からまたたく間に景気を回復させた、その実績のある手法を、実はヒットラーは、まるごといただいただけだったのです。
先ほども述べました。
月300時間働いて、300万円の所得があったものが、200万円に下がってしまった。
だからといって、政府が月の営業時間を200時間に短縮したら、売上がもっと減って、財政が破綻するのは、当然すぎるくらい当然のことです。
だから、高橋是清も、ヒットラーも、その足らなくなった売上を、政府のお金で使いまくったのです。
売上がもどれば、民間に活力が出ます。
活力が出れば、税収もあがります。
税収が上がれば、政府はもっと公共投資を拡大できます。
つまり善循環が始まるわけです。
実は、米国のルーズベルトが行ったニューディール政策も、これと同じです。
ルーズベルトも、日本の高橋是清財政に倣い、政府の積極的な財政投資を行って、米国の景気を一期に回復に向かわせています。
要するに、世界の誰もできなかったデフレスパイラルからの脱出方法を、日本の高橋是清が開発し、それを実行し、またたく間に景気を回復させ、その成功の経験が、ヒットラーやルーズベルトによって、応用されていたわけです。
いまの日本も、実は、デフレスパイラルです。
バブル崩壊後、日本経済は、出口の見えない暗いトンネルをさまよいました。
その間、政府は規制緩和を行い、財政を緊縮させ、消費税を導入しました。
要するにデフレなのに、景気を悪化させる手だてばかりをやってきたのです。
だからこそ、そんなことしかできない自公政権は世間に見放され、国民の怒りが政権交替、民主党政権樹立という事態を迎えたのが4年前です。
ところがその結果生まれた民主党政権は、景気を回復させるどころか、国そのものを破壊する行動に出たために、こんどは国民どころか八百万の神々の怒りをかって、大震災を迎え、さらに選挙での大敗を喫しました。
いま、安倍内閣のもとで行われつつあるアベノミクスは、実は、高橋是清財政の再来です。
国民経済が疲弊しているからこそ、政府が積極的に財政投資を行い、国民の経済活力を回復させる。
これは実際に成功例のある、実に理にかなった方法なのです。
ところがこれに対し、「そんなことをしたら、政府の財政赤字が膨らみ、政府の借金がますます増えてしまう」という人がいます。
なるほど日本政府の借金は、いまや1000兆円です。
たいへんな額です。
けれど、借金というものは、必ず貸し手がいるものです。
貸し手がいるから、借りることができるのです。
貸す人がいなければ、借金はできません。
あたりまえのことです。
日本政府の借金は、1000兆円と申し上げました。
では、世界の年間のGDP(国内総生産)がどのくらいあるかというと、主要187カ国の合計で約7千兆円です。
世界最大の米国でさえ、年間1570兆円しかありません。
以下、支那、日本と続き、4位のドイツで340兆円、5位フランスが260兆円です。20位のスイスになると63兆円しかありません。
現実の問題として、日本に1000兆円ものお金を貸せる国など、世界に存在しないのです。
そしてそれができるのは、実は、日本人だけなのです。
ですから、日本国政府の借金というのは、実は日本国民が貸しているお金です。
日本国政府が日本国民に発行したお金を、日本国民が日本国政府に貸しているのです。
つまり日本国政府の借金というのは、実はそのまま日本国民の債権なのです。
ということは、日本国政府の借金というのは、日本国民の定期預金です。
簡単にいえば、1000兆円というのは、国債という名の、日本国民の預金です。
預金残高が多すぎるからといって潰れる銀行はありません。
同様に、日本国政府が発行した通貨を、日本国政府がどれだけ貯金として国民から預かっても、日本国政府が潰れることはありません。
なぜならその預かり金をそもそも発行しているのが、日本国政府だからです。
さらに、政府がアベノミクスで公共投資にお金を遣ったら、インフレになるという人もいます。
何をか言わんやです。
いまはデフレなのです。
デフレギャップが、拡大しているから、経済が沈滞化しているのです。
デフレのときは通貨を発行してデフレギャップを埋める。
そしてインフレになったら、引き締めを行ってインフレギャップを埋める。
あたりまえのことです。
インフレににもなっていないのに、デフレを脱却するために通貨発行をしようということについて、インフレ懸念があるから、などとのたまうのは、明らかな「まやかし」」にすぎません。
本来、働いてモノやサービスを提供した総量(上でいう300時間の営業時間)と、そこから発生する売上高(300万円)、遣った額(300万円)の3つは、必ず一致します。
ところが、同じだけ働いても、売上高が200万円に下がったら、使える額もまた200万円に下がります。
だからといって、働く時間を100時間削ったら、もっと所得は減ってしまう。
だからこそ、アベノミクスやオリンピックで、財政出動するわけです。
つまり、政府のお金で、売上高を100万円上積みする。
そうすれば経済は回復する。
あたりまえのことです。
それだけの話です。
その簡単なことがわからず、リストラして営業時間を減らし、モノやサービスの提供そのものを削減し、さらに減った所得から消費税の大増税をして、さらに一層、国民の所得を減らそうとする人たちがいます。
これは、国民経済にとって、悪い効果しか及ぼさないのは自明の理です。
にもかかわらず、それを「国民経済活性化のために」などと、おためごかしを並べて、国の経済を悪い方に誘導しようとする。
そういう人たちは、国民の暮らしや生活、若者達の就職など、何も考えていない、ということです。
では、誰のために彼らがそのようなデタラメを並べているかといえば、日本経済が沈滞化することが自国の利益と思っている、特定の外国の利益を図ろうとしているといえるわけです。
要するに、金をもらって日本破壊の工作活動に乗った人たちだということです。
日本国民は、もうそろそろ目を覚ますべきだし、他国の利益のために日本を破壊しようとするような連中は、テレビへの出演も、大学などで教鞭をとることも、今後は一切認めない方向にするべきだと思います。
※この記事は、先般行われた日本史検定講座における三橋貴明先生の講義をもとに、私なりにまとめさせていただいたものです。
日本史検定講座は、ほんとうにためになります。
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字幕【テキサス親父】日本が世界に教えた事「日本人の様に振る舞え」
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