運命を決めるのは国家。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





ニッポンの防衛産業 艦艇建造基盤は継続できるか。

その運命を決めるのは国家。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20130820/plt1308200727000-n1.htm




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海上自衛隊最大の護衛艦「いずも」




 華々しい進水を果たした基準排水量1万9500トンの全通甲板型ヘリ搭載型護衛艦「いずも」(22DDH)。建造企業である「ジャパン・マリンユナイテッド」は今年1月、「アイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド」と「ユニバーサル造船」の2社が統合して誕生した。

 同社は、こうした再編を経たことや「ひゅうが」「いせ」といった、やはり大型の護衛艦も受注してきたことからも、今をときめく企業と言える。

 しかし、再三述べているように同社含め、わが国の艦艇建造が極めて厳しい状況下に置かれていることは少しも変わりない。どんなに大きく立派な装備を作っても、防衛生産・技術基盤を維持するためには、「継続」していくことが最重要なのだ。

 まず、これだけの巨大な艦をたった5年弱で建造しなくてはならないことは「アンビリーバブルだ!」と外国人も驚いている。今回、基準排水量1万3500トンの「ひゅうが」型よりも大型化しているのに、判で押したようにいずれも同じ期間で建造するという取り決め自体に無理がある。

 護衛艦建造の難しさは、とてつもない艤装(ぎそう)密度であることだ。漠然としたイメージでは、「軍艦」と言えば「頑丈」という言葉が思い浮かびそうだが、むしろ技術的には「繊細」という言葉がふさわしいようだ。

 極めて狭い区画に無数の装備品や電線が複雑に密集し、電線の艤装密度は商船の約20倍「電線だけで関東から九州くらいまで伸びるでしょう」と言われるほどだ。

 このように高度な作業を要求されるため、スケジュールは激務となる。受注してから着手では、とても間に合わないため、仮にそれを見込んでフライングする(海外に大型艦のノウハウを学びに行くとか、部品をあらかじめ手配するなど)としても、企業の持ち出しとなり回収はできない。

 最近、そうしたことは企業内でも許されなくなっているため、ますます造船所の現場を苦しめる構図となってしまう。

 今回の命名・進水式では、炎天下に約3000人以上の人々が集まった。大人も子供も目を輝かせていた。軍艦の誕生がいかに国民の心を躍らせる行事であるかが分かる。

 造船所の人たちは直前までの作業で疲労困憊(こんぱい)していたが、大勢の人の中に家族の姿を見付けたとき、ハッとしたという。

 「疲れ切った顔で進水式はできない!」

 子供たちに日本の軍艦誕生の歴史的な瞬間を見せたい。それがパワーになった。

 あの子供たちが成長した将来も艦艇建造基盤は継続できるのか、その運命を決めるのは国家以外にないだろう。企業努力への依存は限界がある。 =毎週月曜掲載

 

■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 

 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「誰も語らなかった防衛産業」(並木書房)、「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)など。