与那国監視隊 配備を加速させる好機だ
政府が陸上自衛隊「沿岸監視部隊」の配備を計画する沖縄県与那国町の町長選で、配備推進派の現職が反対派新人との接戦を制し3選された。
陸自の配備を認める民意が明確に示されたものであり、歓迎したい。
安倍晋三首相は3月の衆院本会議で、平成27年度末までの配備を目指す意向を表明した。小差の結果ゆえ反対運動も続くとみられるが、政府と与那国町は協力して計画通りの配備に邁進(まいしん)してもらいたい。
日本周辺の安全保障環境の激変に応じて自衛隊を配備し、国家と国民の安全を確保するのは政府の重要な責務だ。自治体や住民が配備に際し地域振興策を求めるのはある程度、理解できる。だが、そのことで配備が遅れるようになったのでは、本末転倒である。
与那国島を含む南西諸島の海空域では、中国軍の航空機、艦船による挑発的活動が激しくなる一方だ。その動向を監視する部隊は南西防衛にとって欠かせない。
与那国島は、日本最西端に位置し、尖閣諸島まで約150キロ、台湾まで約110キロの距離にある安全保障上の要衝である。
にもかかわらず、与那国島をはじめとする先島諸島は、宮古島に航空自衛隊のレーダーサイトがあるだけで、防衛力の空白地域だ。国境の島、与那国に自衛隊を配備する意義は極めて大きい。
島に配置される沿岸監視部隊は100人規模で、周囲を航行する外国の艦船を光学機器で監視し、航空機をレーダーで探知する役割を担う計画である。
監視部隊配備の意味合いは情報収集の強化にとどまらない。与那国には民航機用の2000メートル滑走路を備える空港がある。尖閣や台湾から目と鼻の先の空港である。そこに自衛隊を配備すること自体が大きな抑止力になり、尖閣をはじめ領土・領海・領空を守るという日本の強い意思表示となる。
先島諸島ではこのほか、陸自が石垣、宮古両島を念頭に、「初動対処部隊」配備の検討を進めている。これは、尖閣で万一、事があった場合などに動くことも想定した実力部隊といえる。
空自は尖閣周辺へのスクランブル(緊急発進)能力を強化するため、戦闘機部隊を下地島などへ配備する構想を有している。
与那国への陸自配備は、先島諸島の防衛空白を埋める第一歩として象徴的意味も持つのである。