恐れる支那。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 









【湯浅博の世界読解】




米国のブッシュ共和党政権の元高官が最近、ケリー国務長官とアジア問題で協議した際に、長官から「どうして日本はアジアで孤立しているのか」と問われた。知日派の元高官が「それは中国と韓国だけのことで、日本の安倍晋三政権は、他のアジア諸国から歓迎されている」と答えると、びっくりしていたという。

 最近、ある日米安全保障に関係した集まりで聞いた話である。元来、アジアへの関心が薄かったケリー長官に対する国務官僚の説明が不十分だったか。あるいは、中国による「世論戦」の成果かもしれない。

 中国は日本政府が尖閣諸島(沖縄県石垣市)を国有化して以来、尖閣諸島問題がただの領土紛争ではなく、日本による「侵略の歴史」が原因として歴史カードを多用した。

 だからこそ、東アジアを熟知する米国の知日派人脈が重要になる。知日派の元高官は、ケリー長官に「孤立を恐れているのは、むしろ当の中国なのだ」と解説を加えており、長官は東アジア情勢への学習効果を高めたに違いない。

 実際、日本がアジアの海をめぐる案件で孤立することは考えにくい。中国は南シナ海の大半を「力で支配」しようと、ベトナム、フィリピンの沿岸国と対立し、東シナ海では尖閣諸島を奪取しようと日本と対立している。

彼らは中華帝国の伝統理念である「華夷秩序」を海洋にまで持ち込んできた。中心部には中華があり、帝国は外縁に向かって序列の低くなる異民族を統治する。東南アジアの小国には中国の巨大市場をちらつかせ、必要なら経済支援もする。狙いは日米と東南アジア諸国連合(ASEAN)の分断であり、ASEAN内にもまた、南シナ海の沿岸国とインドシナ半島内陸の国々との間にクサビを打ち込んできた。

 中国の悪夢は2010年7月のASEAN地域フォーラム(ARF)で、当時のクリントン国務長官が「アジア回帰」を改めて打ち出したときだ。長官は「南シナ海の航行の自由」は米国の国益だと強調し、領有権問題の多国間での取り組みに意欲をみせた。

 中国は個別交渉なら力でねじ伏せられるが、多国間交渉になると、とたんに孤立する。日本の安倍政権には、東南アジアをはじめ、インド、ロシアなど遠い国と手を組まれ、近くの“敵”に2正面作戦を強いる「遠交近攻外交」で包囲網を築かれている。

 今回、ブルネイでの中国とASEANの外相会議で、中国の王毅外相は対立を緩和する現行の「行動宣言」を法的に拘束する「行動規範」に引き上げる高官協議を受け入れた。王外相は多国間協議を「9月開始、場所は北京」とした。

これにより、日米が加わるARFで、南シナ海の係争に対する介入を封じることができる。外相は02年に署名した法的拘束力のない「行動宣言」に触れ、「個別の紛争は当事国と協議する」と消極的な立場を示唆した。

 中国にとって韓国の中国急接近は、心強かったはずだ。韓国はしょせん、大陸に連なる「従属変数」だと考えれば、中国をヨイショするのもムベなるかなである。日本は民主主義、法の支配など価値観の違う中国を相手にする以上、急がず騒がず「機が熟するのを待つ」(東洋学園大学の櫻田淳教授)外交が妥当だろう。

(東京特派員)