経世済民。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





【アベノミクスへの直言】

「規制緩和」の意味、単なる手段…政府の目的は

「経世済民」

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20130621/plt1306210710000-n1.htm





 筆者は別に「規制緩和は常に悪」などと言いたいわけではない。とはいえ、政府の存在目的が「規制緩和」でないことも、また確かなのである。政府の目的は「経世済民」だ。すなわち「国民を豊かにするための政策を打つこと」こそが、政府の目的なのである。国民を豊かにすることができるならば、規制緩和も善となる。規制緩和はあくまで「手段」であり、目的ではない。

 別の言い方をすれば「国民を貧しくしてしまう規制緩和」は、これは間違っていると言わざるを得ない。何しろ、政府の目的である経世済民に反している。

 1989年の日米構造協議以降、日本ではさまざまな規制緩和が行われた。その中でも、特に「間違っていた」と断定できる事例をご紹介する。

 90年に物流二法(『貨物自動車運送事業法』および『貨物運送取扱事業法』)が施行され、わが国の運送事業における規制が大きく緩和された。結果、確かに新規参入が相次ぎ、日本の貨物自動車運送事業者数は約4万社から約6万社に増えた。業者数が1・5倍になり、道路貨物運送サービス価格は下がり始めた。

 とはいえ、90年とはまさにバブルが崩壊を始めた年だ。バブル崩壊で「需要」が減少する中、規制緩和で業者数が増えた結果、何が起きたか。

 特に、89年のデフレ本格化以降、運送サービス価格の下落率以上のペースで、道路貨物運送業の賃金水準が落ちていったのである。ピークから見ると、運送サービス価格の下落率は6%ほど下落した。それに対し、賃金水準の方はと見れば、一時(2009年)は17%超も落ち込んでしまったのだ。

 物価の下落率以上のペースで、所得(賃金)が下がる。まさにデフレ期の特徴であるが、90年の運送事業の規制緩和は、同業界で働く人々を間違いなく「貧しく」してしまった。確かにサービス価格は下落したが、運送事業の規制緩和は「経世済民」の目標を達成したと言って構わないだろうか。そんなわけがないのである。

 繰り返すが、規制緩和は単なる手段であり、目的ではない。そして、規制緩和とは新規参入を増やすことで「価格を下げる」ことを目指す。デフレ期、つまりは「物価の上昇」を目指さなければならない時期の規制緩和は、果たして正しいだろうか。

 間違っていない、と強弁する人には、ぜひとも「デフレ期に規制緩和をしても、働く国民の所得は下がらない」というプロセスを、論理的に説明してほしいものだ。

 

■三橋貴明(みつはし・たかあき) 

 1969年、熊本県生まれ。経済評論家、中小企業診断士。大学卒業後、外資系IT業界数社に勤務。現在は株式会社「三橋貴明」事務所社長。著書に「目覚めよ! 日本経済と国防の教科書」(中経出版)、「だから、日本経済が世界最強というこれだけの理由」(ワック)、「日本大復活の真相」(あさ出版)など。