株価は市場関係者の自作自演。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





勝手に期待、勝手に失望。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130611/dms1306110709001-n1.htm





 5日発表された安倍政権の成長戦略第3弾について、株式市場の反応が芳しくなかった。短期的な見方で反応しているのだろうが、そもそも筆者は株式市場関係者がどうして成長戦略に期待するのか、よくわからない。

 これまで打ち出されたのは、第1弾が待機児童解消、先端医療センターなど、第2弾が攻めの農業、設備投資支援など。そして今回の第3弾は医薬品のインターネット販売解禁や混合診療の推進などだ。

 成長戦略には、産業政策と規制緩和が混在している。今回の第3弾は規制緩和を前面に押し出しており、それは評価できる。規制緩和は、日本語で「緩和」だが、英語では「デレギュレーション」であり、規制「撤廃」が元々の意味だが、和訳する時に「緩和」と骨抜きになっている。そのため、医薬品のインターネット販売では「解禁」、混合診療でも「推進」と、まだ色濃く「規制」が残っているニュアンスだ。

 海外では、これらはそもそも当たり前で、なぜ日本で問題になるのかさえ理解しにくいだろう。このような細々した当たり前の話を首相自らが発表しなければいけないのか、不思議だろう。

 規制緩和の効果はすぐには出ない。そもそも首相が発表しても、具体的には法律改正などの手続きがまだ残っている。規制緩和では、この法律改正などで「骨抜き」が行われるのがこれまでの歴史であるので、今の段階では首相が方向を発表しただけで、まだどうなるかは未知数といったところだ。

 また、政府にとって成長戦略は一番不得手な分野だ。政府の成長戦略をまともに信じるのは、マスコミくらいなものだ。政府としては、規制緩和して成長してくる産業や企業を待つしかない。政府自らが成長する産業や企業を作れるはずもないのだ。

 そこにダメ押ししたのは、「1人当たり所得10年間で150万円増」というもの。これは名目経済成長3%を前提にした数字だが、3%では先進国最低ランクである。これはちょっとおかしい数字だ。せめて4%成長の200万円増とすべきだが、過去の政府答弁などに引きずられた公算が大きい。

 これらの意味で、成長戦略にはもともと期待できないはずなのに、株式市場関係者は勝手に期待してきた。株価の動きについては、統計的にいえば政策による予測力は乏しい。いってみれば、最近の株価は勝手に期待して失望している自作自演の感が強い。

 最近株価の下げが大きいが、リーマン・ショック以降の米英の株価でも一時的な調整はあった。むしろ心配なのは、各種経済指標はかなり順調にもかかわらず、資産価格が一時より下がったくらいで日銀の追加緩和を求める声だ。

 そもそも株価は金融緩和での副産物にすぎない。バブル時に資産価格が上がったといって金融引き締めを行ったのが誤りなのと同様に、資産価格が下がったといって金融緩和するのも誤りである。短期的な資産市場の動きに右往左往せずに、じっくりと長期的な実体経済の動きを見守るほうがいい。 

                 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)