アニメ「ガルパン」人気で思わぬ再評価。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20130611/plt1306110708001-n1.htm
第7師団創立記念行事に登場した陸上自衛隊の「90式戦車」=北海道
日本で唯一の機甲師団である北海道の第7師団で6月最初の日曜日(2日)に記念行事が行われ、100両はあろうかという戦車の観閲パレードや迫力ある訓練展示に人々は湧いた。
同じころ、茨城県大洗町でも、まったく違う種類の戦車フィーバーが起きていた。アニメ番組「ガールズ&パンツァー」(通称・ガルパン)の舞台が同地であったことが、そもそもの始まりで、ここ最近、休日ともなると多くのファンが集まっているという。
「ガルパン」は、茶道でも華道でもない「戦車道」を大和撫子(なでしこ)のたしなみとする世界で、戦車を操るガールズが奮闘する奇想天外なストーリーだ。
アニメ中の市街地戦で戦車が突っ込んで大破する旅館は実在し、現在、数カ月先まで予約がいっぱいなのだとか。また、水戸市のとんかつレストラン「クックファン」では「戦車型とんかつ」が大人気となっている。
このように、曲がりなりにもわが国で戦車が注目を浴び始めたことに、ロシアや中国など周辺国は焦っているのではないだろうか。
戦車の生産基盤が先細りし、技術の継承が困難な状況になっていることは彼らには歓迎すべき状況だったかもしれない。だが、戦車が思わぬところで再評価されるようになり、映像などでその実力が示されることは相当なインパクトを与えている可能性がある。もし、そうであれば抑止効果は絶大だ。
それも外国から買ったものではない、自国の技術の塊であることが大きなポイントだ。敵に攻撃を躊躇させ、手出しさせないことが「抑止」であり、それが平和につながる。そう考えれば、精強さを維持する自衛官はもちろん、町工場も含めた戦車製造に関わる約1300社の関連企業の人々もまた、日本の平和を支えているという論理が成り立つ。
そして、この当事者たちは、誰よりも平和を望んでいるのである。
「実戦で使われないことを祈っています」
技術者たちが必ず口にする言葉だ。自分たちが何十年も心血を注ぎ、人生を賭けたものであるが、それを自衛隊が実際に使う事態にならないよう、ひたすら願って止まないのである。一見、矛盾する話のようだが、これが嘘偽りない彼らの感情だ。
「抜かない名刀…」
誰かが言った。自衛官もそうであるが、わが国が持つ実力を外国はよく見ている。今のところ「眠れる獅子」を起こすようなことはしたくないはずだ。しかし、これから先、日本が本当に眠りこけてしまい、強い装備と人員を維持することを怠れば、事情は全く変わってくるだろう。
「作れる」「持っている」「使える」ことに大きな意味があるのだ。
■桜林美佐(さくらばやし・みさ)
1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「誰も語らなかった防衛産業」(並木書房)、「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)など。