円安の決め手は、米国がQE政策を打ち切るか。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





円高に振れれば株価は下落する。円安継続は米欧次第。

http://www.zakzak.co.jp/economy/ecn-news/news/20130510/ecn1305100710000-n1.htm






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 日銀がお金を大量に刷るという量的緩和のアナウンスメント効果が顕著に現れているのは株価である。中央銀行がおカネを刷れば、株価は必ず上がるのか。

 グラフを見よう。米連邦準備制度理事会(FRB)は2008年9月のリーマン・ショック以降、猛烈な勢いで住宅ローン担保証券や国債を買い上げ、ドルを金融市場に流し込んできた。量的緩和(QE)1、QE2、QE3と3弾を撃ち、資金供給残高(マネタリーベース)はリーマン前に比べて3・2倍に膨らんでいる。それを米株価(ダウジョーンズ総合平均指数)に重ね合わせてみると、その連動ぶりには目を見張る。つまり、米国ではおカネを刷れば株価が上がるという「法則」が存在すると思わせるのに十分だ。

 株価はその間に突如落ち込んだ局面が数回ある。その直接的な原因はギリシャなどユーロ加盟の政府債務危機であり、いわば外部要因である。目をこらしてみると、FRBがマネタリーベースの伸び率を抑えて横ばい気味に操作しているときに株価は下に振れている。横ばいから一転してドル資金供給量を上積みしたら、株価は確実に上昇する傾向を示している。

 米株価はこれまでのところ、FRBのドル増量政策によって支えられてきた。人の身体でいえば、大量の輸血で元気になるが、輸血がないと足下がふらつきかねない。

 ドルを刷れば、なぜ株価が上がるのか。住宅ローン担保証券や国債をFRBに売って余剰資金を手にした金融機関が株式のインデックス投資信託に投資し、平均株価を押し上げるからだと、ウォール街関係者から聞いたことがある。2010年秋からはFRB幹部がウォール街の民間大手金融機関と株価上昇策を示し合わせたのである。

 さて、日本はどうか。日銀による大胆な金融緩和を求める安倍晋三首相の発言に続く黒田東彦(はるひこ)日銀総裁による異次元緩和策を受けて株価は急速に回復している。しかし、日米間では株価と量的緩和の結び付きのプロセスがかなり違う。日本の場合は、量的緩和が円安に導き、株価は円安に反応して上昇する。

 日本は円安が止まり、円高に振れると、株価は確実に下落する。円安基調の継続が株価上昇の決め手になるが、黒田日銀の異次元緩和だけでどこまで円安に持っていけるかは、米欧、特に米国のQE次第である。米国は今年に入って毎月800億ドル余りのドル資金を追加発行しているが、黒田日銀はこれから年末にかけて月平均7兆2500億円の円資金を刷り増す方針を決めている。7兆2500億円を800億ドルで割ると1ドル当たり90円強となる。

 お札の増刷速度からみると、円安が急速に進むとは考えにくく、円が1ドル=100円を突破するには、量的緩和規模が足りないかもしれない。すると、円安の決め手は、米国がQE政策を打ち切るかどうかにかかってくる。日本の株価は円相場動向にかかってくるから余計気になる。 

                      (産経新聞特別記者・田村秀男)