【40×40】山田吉彦
警備体制を構築し日本人漁師守れ
長崎県の離島・壱岐島は、知る人ぞ知る黒マグロの産地である。この壱岐島の勝本漁港に今年1月13日、重さ310キロもの巨大クロマグロが水揚げされた。壱岐島では、時々、200キロ超のマグロが上がるが、300キロ台は6年ぶりだという。釣り上げたのは、中村稔さん。ひとりで船を操り、玄界灘の巨大マグロに挑む漁師だ。中村さんの船は、4・9トン。数時間にわたる激闘の末、見事、釣り上げた。
近年、壱岐島のマグロ漁師たちが海の異変を感じている。その一つは、以前よく釣れた小型のマグロが激減したことだ。手釣りの小マグロは、蓄養業者が高値で買い取るため、一時期、乱獲が危惧されたが、現在ではマグロ資源の確保のため自重している。小マグロが減れば、いずれ大マグロが獲(と)れなくなることは必然だ。
漁師たちが、小マグロの減少の理由として考えているのは、日本海で行われている巻き網を使ってのマグロ漁と東シナ海での中国漁船の乱獲である。中国漁船は、トラ網と呼ばれるひき網漁を行い、回遊魚を文字通り一網打尽にしているのだ。特に東シナ海中部は、クロマグロの産卵場である。小マグロ減少の一番の原因は、産卵期のマグロを捕獲しているためではないかと分析する。
たしかに中国漁船が東シナ海中部で大規模に漁をはじめたのは2010年以降で、小マグロの不漁が始まった時期と重なる。東シナ海中部は、日中漁業協定において暫定水域となっているため日中がそれぞれの国の漁船をそれぞれの国のルールのもと管理することとなっている。中国漁船団に自制がないことは、中国漁民と韓国警備当局とのトラブルが頻繁に起こり殺人事件にまで発展したことでも明白だ。もっと厳格な漁場管理体制を敷かない限りトロの味も分からない中国人にマグロを獲り尽くされてしまう。
また、日中の漁民同士の衝突となりかねない。そのとき、日本の漁師は、新設された中国海警局により逮捕されることも想定される。日本人漁師を守るためには、威厳を持ち海上警備体制を構築する必要がある。自国の海を守ることに躊躇(ちゅうちょ)してはいけない。
(東海大教授)=おわり