情報収集態勢を強化
政府が地上を監視できる衛星を平成25年度から5~10年かけて倍増させる計画を策定したことが21日、分かった。北朝鮮のミサイル発射施設などを監視するために運用中の情報収集衛星とは別に、新たな衛星システムとして6基を打ち上げる。アルジェリアの外国人人質事件をめぐり衛星分野でも日本の情報収集態勢が不十分なことが浮き彫りとなり、計画前倒しや識別能力の向上も視野に入れる。
新衛星システムは災害監視や地図作製、資源探査などを主な目的に構築。「光学衛星」と「レーダー衛星」を計6基打ち上げ、世界のあらゆる地点を撮影できるようにする。
政府は地上監視衛星として安全保障分野を中心に活用する情報収集衛星を運用している。今月27日にレーダー衛星を打ち上げ、光学とレーダーを2基ずつの計4基を周回させ、世界のあらゆる地点を1日1回以上撮影できる態勢を整える。
情報収集衛星に加え、新衛星システムを構築することで地上を監視できる衛星は10基となり、特定の地点を原則1日に2回程度撮影することが可能になる。
ただ情報収集衛星は「宇宙の平和利用決議」(昭和44年採択)に基づき商業衛星などで「一般化」した能力に限定され、1メートル以上の大きさを識別できる程度。新システムの衛星も同じ程度の能力を想定している。
これに対し米国の偵察衛星は15センチ程度のものまで識別できる。アルジェリアの人質事件で政府は情報収集衛星も投入したとみられるが、政府高官は「現場の天然ガス関連施設の状況把握は米国の衛星情報が正確だった」と語り、日米の能力差が裏付けられたという。
このため日本が独自に情報を入手するには識別能力の向上が不可欠。文部科学省は平成25年度予算案で「衛星開発費」として146億円を要求した。
政府は新システムの開発費と運用費の負担を軽減するため、災害の多い東南アジア諸国から官民の資金を募る。情報収集衛星のデータは非公表だが、新システムで撮影した画像は民間にも販売し、収益を開発や運営費の一部に充てる方針。