アルジェリアの人質事件で、城内実外務政務官らが死傷者の搬送先である現地の病院で邦人の安否確認をし、プラント建設大手、日揮の社員7人の死亡が確認された。
亡くなられた方々に心から哀悼を表すと同時に、残虐で卑劣なテロへの憤りを新たにする。
今回の悲劇を通じて、海外で邦人が危難に陥ったり危険地で孤立したりした際、迅速な救援と安全地への退避、関係者の現地到達に自衛隊を活用することがクローズアップされてきた。
小野寺五典防衛相は「現地から空港までのアクセスに苦労している」とし、自衛隊を派遣し陸上輸送に当たらせることができるように自衛隊法を改正する必要性を指摘し、自民党の石破茂幹事長も法改正を検討する意向を示した。
同法は、現地での安全が確保されていない限り、在外邦人の輸送を自衛隊に認めていない。
これでは、自衛隊は持てる機能を十分に発揮できず、自国民を保護するという、国家としての重大な責務を果たせない。
最大の問題は、政府の憲法解釈が「安全確保」という縛りをかける背景となっていることだ。
自衛隊が海外で武器を使用できるのは、自衛と自らの管理下に入った者を守る場合に限られる。それ以外は、憲法9条の解釈による「武力行使との一体化」に該当するとして禁じられている。国際基準の任務を妨げる行為を排除するための武器使用も認められず、国際常識とはかけ離れている。
その制約を受けて、自衛隊による邦人救出も、「武力行使」に当たる恐れがあるとして、極めて抑制的に位置付けられてきた。
石破氏は「単なる輸送だけではなく救出まで行うことができる」改正案を軸に検討するという。
邦人輸送に関する「安全確保」の制限を緩和し、避難する地域から空港、港湾までの陸上輸送や、邦人警護のための一定の武器使用も認めるという内容である。
小野寺氏は「武器使用基準や憲法の問題など、いろいろな制限がある。いくつか乗り越えなければいけない壁がある」と語った。憲法解釈の変更も求められよう。
遠隔地、北アフリカでの痛ましい犠牲は、テロや紛争に巻き込まれる危険性が一段とグローバル化していることを物語っている。万一の事態に素早く動ける態勢を整えておかなければならない。