救出運動-今年の総括と今後の展望-東京連続集会70報告2
西岡 増元さんは運動の中心におられて1年間やってこられたわけですが、この1年を振り返ってどうですか。
◆敗北感を感じた
増元照明(増元るみ子さん弟、家族会事務局長)
敗北感を感じるなとは言われていますが、やはり敗北感を感じてしまいます。
昨年12月に金正日が死亡して、今年1月に松原さんが大臣になりました。メディアの方々の中には、松原大臣が就任中に解決できないのでは、もう解決できないのではないかという雰囲気さえありました。
松原大臣はご存知のように、当初から時間の問題、そして北朝鮮の責任問題は問わないという形で発信し、半年の間に何らかの結果を出したいということで懸命に手を延ばしていました。
それが少しいい方向に行くかなといった時に、8月に遺骨収集問題が起きました。こんどは民主党の官邸主導で北朝鮮政府と表の交渉をするから裏の交渉はやめておけという話が出て、ストップせざるをえない状況になった。その後の交渉は、結局はあのような状況です。
あの時に両面やればよかったのにと思いますが、官邸主導でやりたいという誤った考え方だとは思います。両方やって、しかも二元外交ではなく完全に全部集約された形のアプローチをすべきと思っていたんですが、それができなかった。
一番嫌なことは、10月にあのような人事で辞めざるをえなくなった。私は、前々日まで鹿児島に一緒していまして、松原さんに「まさか変えられることはないでしょうね」と言ったんですが、「まだ分からない」ということでした。
そして組閣人事を見たら、完全に民主党政権はだめだと(思いました)。もう内向きの人事しかできない。拉致問題軽視としか考えられない人事でした。そして失望し、早く野田政権が交代していただくことを願っていました。
ただ、野田さんに関してはよく分からないんです。見た目には誠実そうに見えるので。だから思いは強いんでしょうが、結局あの人事を見ていると、拉致問題がないことがありありと分かりました。
日本には色々な問題があります。原発の問題もあるし、震災の復興の問題もあります。しかし、虐げられている人間、しかも日本の国家が守らなければならない人間を放置して、そちらの方向に行くというのは、少し私はどうなのかなと思っています。
震災の被害に遭われた人たちと同じように、拉致の被害者を救出するために同じような力を注ぐべきだと思うんですが、それが同じようには注がれていなかったということが、この1年間何も起きなかった(原因だと思います)。
先日の局長級会談、これは恐らく北朝鮮が日本側と話し合いたいという回りの雰囲気が2002年に近づいたからだと私は思います。制裁の圧力、そして北朝鮮の国内事情、色々なものが加味されて日本との交渉をして、日本から資金援助を受けたいというのが北朝鮮の考え方でしょう。
遺骨の問題からアプローチして、最終的には国交正常化という道筋を、北は策略していると思います。これは間違いないと思います。その策略には安易に乗らないほうがいいと思います。
横田さんがおっしゃったように、なぜあの時点でこちらサイドから交渉を切らなければならなかったのか。私は理由が分からなかったんです。最初の局長級会談の時には、相手方がどのように考えているかまだ分かりませんという説明があったんです。
それだったら、もう1回、相手がどのように考えているかを探ればいいと僕は思うんですが、ましてまだミサイルを発射していない段階ですよね、(交渉予定の)5日、6日というと。発射するという声明を出しただけで、発射していない段階で、直接会って日本の立場を言えばいいじゃないですか。それが外交という場面じゃないですか。
外交力では北朝鮮の発射を止められないかもしれないけれど、日本の立場は明確に、直接伝わるわけで、しかも相手がこの拉致問題で何を考えているか見える可能性もある中で、なぜこちらから断ち切るのかと不可解でした。民主党の外交は。玄葉(外務大臣)さんがやったのか、官邸がやったのか分かりませんが、まあ官邸主導でやったんでしょう。
先日、民主党代表選で海江田さんが選ばれて、ご自身が「民主党が政権を担うには未熟だった」とおっしゃったようですが、未熟だったら最初から政権をとるなと言いたいです。自分たちがそう考えるんだったら政権を取る党としては失格だと思って、途中で早期に解散すべきだった。
1年間、本当に残念な思いでおります。私は、横田めぐみさんとは意見が違いまして、飯島参与、あの方の心は少し信用できません。なぜなら小泉再訪朝の時、あの方は小泉総理とともに訪朝されました。そして金正日を迎える時に、山崎官房副長官(当時)と並んで、満面の笑みで金正日と握手をしたんです。
その場面を見た時に、私は怒りにふるえました。なぜ、被害者をまだ幽閉し返さない国家の、まだ国家ではなく集団ですね、頭目となぜ笑いながら握手できるのか、と。私は本当に怒りにふるえたんですが、そこにはやり飯島さんの国交正常化をしたいという思いがあったのかなと思います。
総連との話し合いなどもそうでしょうが、小泉元総理の国交正常化を優先するという方針のもとに、金正日との面会を達成し、だからこそ満面の笑みを浮かべたのではないかと思っています。
そういう方が参与になりましたが、私は朝鮮半島問題に関与していただきたくない。今言われているように、官邸の体制を締めるという意味ではあの方は適任なのかもしれませんが、朝鮮半島問題には関与していただきたくないというのが正直な気持です。
その方が制裁を批判されているということは、やはり制裁がじゃまになると考えておられると私は思っています。これは分かりません。あの方に直接会って聞いてみたいと思うんですが、あまり会いたくないんです(笑)。
◆世界と連携を
本間 勝(田口八重子さん兄)
みなさん今晩は。いつもありがとうございます。今年を振り返ると、あっという間の1年。国民大集会を4月と9月の2回行ってアピールしたにも関わらず、最後に動き始めた局長級会議も流れてしまった。
私たちがまちの中で署名運動をやっていると、市民の人が言うんですね。「拉致問題というのは命の問題じゃないですか。時間の問題でしょ」と。「ミサイルが飛ぼうが飛ぶまいが、それは別ですよ」という声を聞きました。私もそう思いました。
ミサイルでお金を使って、人民を苦しめている金正恩体制が今後維持されるのかが危惧されますが、核・ミサイルで莫大なお金を使っているわけですね。人民の食糧は5年分まかなえるお金だとか、なのにそれを使ってしまっているとかということは、本当に人民のためを思っていない、自分が生きていくための体制が続くのか。
軍の中でも、金正恩によって粛清されている幹部が何人も出ているわけですね。当然、つながりのある人たちは今後金正恩に対して信頼がもてないということできっと反発します。政権交代のクーデターを起こすか分からない状態が、今後1~2年は続くんではないかと思います。
私の1年の総括としては、金正恩の体制がそれなりの体制になり、平和になるかなと期待していましたけれど、それはミサイルを飛ばしたことによって、微塵に吹き飛ばされ、先軍政治を続けて行くという意思表示が強く出てきた1年だったと思います。
じゃあ来年私たちはその軍事政権に対して家族を取戻せるのかと、どういう風にやっていけばよいのかと。増元さんが言われるように、制裁で北朝鮮を締め付けていかないともうだめだと思うんです。
自分の国の住民さえ統括できないような自分勝手な人ですから、考えをくつがえすような、まともな人になってもらえるのかどうかが注視されるわけです。
今年1年、特定失踪者の運動の中でも、地元に「拉致問題を考える川口の会」というのがあるんですが、その中の藤田進さんについて、弟の隆司さんがスイスのジュネーブで強制的失踪作業部会に訴えました。これが受理され、北朝鮮に対して、調査して回答しろと言っているんですが、未だに返事は来ていません。特定失踪者も頑張っていますという今年の1年になりました。
政権が変わりましたが、家の兄(飯塚繁雄さん)や松木信宏さんがジュネーブに行き、訴えました。そういう啓発活動については前進しています。来年も世界と一緒に連携していけば、先が見えてくるのかなと思っています。ありがとうございます(拍手)。
■安倍政権に求めたいこと
西岡 実は、明日(12月28日)のお昼、安倍総理大臣、古屋大臣が家族に面会してくださることになっています。来年に向けて、明日、どんなことを総理大臣に求めたいのか、来年どういう希望を持っていらっしゃるのか、一言ずつお願いします。
その後、一人3分ずつ、北朝鮮にいる被害者への訴えを録音します。これは韓国にある自由北朝鮮放送の、お正月の拉致特別番組で放送されるということです。お正月ですから被害者が家でラジオを聞く可能性があります。1年経ってしまったけれど頑張ります、あきらめないでくださいというメッセージを送っていただきたいと思います。
◆解決への対応をスピーディに
飯塚 安倍総理大臣ならびに古屋担当大臣におかれましては、我々の気持とかどうしてほしいとかは、もう完全に分かっている人なんですね。敢えてここで我々の気持を訴えるにしても、それは先刻承知だということですので、解決への対応をスピーディにやってほしいと訴えます。
少なくとも半年で先が見えてくるようにしてほしい、もう1年は待てないということだけは、はっきり言おうと思っています。
今年結果が出なかったことを踏まえて、また来年活動を延長しなければならないと思っています。我々家族会、救う会さらに取り巻く団体と相談し、もっと強い意思を表しながら国民にも訴えていきますし、政府が後戻りすることはないと思いますが、そういったことのないように訴えていきたいと思います。
◆1日も早く帰ってくるように
横田滋 安倍総理は官房副長官の時からずっと拉致問題に取組んできておられまして、今の国会議員の中では最も精通しておられる方だと思いますので、それは我々も信じて、1日も早く帰ってくるように、結果を出すことをお願いいたします。
制裁を強化するというような手段については、政府にお任せするわけで、我々としては、講演会で多くの人に話をするくらいしかできません。
古屋拉致担当大臣も、最善の方だと思っておりますので、ぜひ総理と関係を密にして、一刻も早く解決するようにお願いいたします。
◆日本という国がこんなみっともないことでいいのか
横田早紀江 明日は安倍総理と古屋圭司さんにもお会いできます。あまりにも長く官邸を訪れ、1年毎に代わられる総理大臣に、「お願いします」、「お願いします」と言ってきました。あまりにも暢気すぎると思います。
こんなことをされていて日本の恥ではないんですかと、私は官房長官にお話したことがありますが、「全く」とおっしゃっていましたけれど、本当に恥ずかしいことをされ、子どもたちが犠牲になって35年も激しさが見えない。そんなことを相変わらず1年、1年延ばしていくなって、そんな考え方っておかしいんじゃないですかといつも思います。
上に立つ方がしっかりと、日本という国がこんなみっともないことでいいのかと思っていただいて、そういうことであればと日朝協議をやっていただき、もしも自分のお子さんが被害者だったら自分はどういう行動をとるだろう、という思いで交渉に当たっていただきたいといつも言っていますので、今回もそのような話をしたいと思います。
◆来年の夏までに道筋を
増元 安倍総理、古屋大臣はこの問題はすべて分かっていらっしゃるので、言うことはないと思いますが、一つだけ。どうも安倍総理は次の参議院議員選挙での勝利をめざしていらっしゃるようですので、次の参議院選挙で勝つ一番の方法は、拉致問題の解決だと申し上げたいと思います。
拉致問題を解決すれば、必ず国民も支持します。それをまず目指すことが次の参議院選挙での勝利につながることではないでしょうかと。
方法などはこれまでに考えておられるようですし、北朝鮮の政権についてもよく知っておられます。制裁と宥和の政策がどのような結果を生んだかを全部知っておられる。我々がそれをしないですむというのが安倍政権ができた意味だと思います。これまでは、最初から説明してきましたから。
また、西村眞悟先生が、三宅先生が国会に出てこられる。これが今回の総選挙でよかったことだと思います。議連も強力な布陣ができると思います。
とにかく来年の夏までに道筋をつける、あるいは全面解決をめざしていくように申し上げます。
◆一枚岩で政権運営を
本間 安倍さんに最初お会いしたのは、官房副長官の時で、2003年6月12日に、川口と上尾のボランティアの方々に支援していただいている団体、川口では「田口八重子さんを救う会」、上尾では(北朝鮮に拉致された田口八重子さんのご家族を支援する)「上尾市民の会」で1万8千人分の署名を安倍さんに届け
たんですね。
その時の安倍さんの言葉が、「このような草の根の力が拉致問題の解決に寄与するんだ」というようなことでした。私たちはこれをスタートとして署名活動を長い間やっていたわけですが、国民の力というものが動かす力になったし、北朝鮮にもアピールされていると思います。
ですから安倍さんには、国民もバックアップするから、政権としてその力を受けてやってもらいたいと。それから責任というのは自民党にもあるわけです。外務大臣に面会に行った時でも、「あまり北朝鮮を刺激しない方がいいわよ」という女性の大臣もいたんです。
私たちは、北朝鮮に対して、家族を返せということを、波立てて言うなということなんですね。自民党も一枚岩になりきれていませんでしたね。それがこの問題を長引かせたと思います。
民主党政権も同じでした。政府は、議員は北朝鮮に入るなと決めているにもかかわらず、そちら系の議員が何人か、スポーツの親睦・交流という名目のもとで北朝鮮に入って、向こうの逆宣伝の形で日本に訴えていますよね。入国した時、拉致問題を強力に言ってくれてはいないということも原因だったんです。
これからは一枚岩になってやってほしい。二元外交を止めて。色んな人脈をたどれば金正恩を動かせるというのならいいですけど、そんな力もない人が逆足を引っ張っていることが多かったわけです。
そういうことがないように、一枚岩で政権を運営してほしいとお願いしたいと思います。
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