教育再生
安倍晋三内閣が教育政策で順調な滑り出しを見せている。学力テストの規模拡大や朝鮮学校への高校無償化の適用見直しなど、民主党政権が残した懸案に次々と方針を示しているからだ。
日本の教育制度や政策の基本理念を示す教育基本法は平成18年に改正されたが、その後の改革は日本教職員組合(日教組)などの意向をくむ民主党への政権交代で動きが止まったままだ。
安倍首相は直属の教育再生実行本部(仮称)を近く発足させる予定だが、日教組などからは強い抵抗も予想される。教育立て直しに向けて、怯(ひる)むことなく改革を加速させてほしい。
全国学力テストは現在、小学6年と中学3年の約3割を抽出して実施している。これについて下村博文文部科学相は、平成26年度から児童生徒全員が対象となる当初方式に戻す考えを示している。
ようやく軌道に乗り始めた学力向上策を確実な歩みにする上でも必要な措置である。公教育への信頼回復にもつながる。具体化の検討作業を急ぐべきだ。
文科相はまた、「ばらまき」と批判される高校無償化についても26年度以降に所得制限を設ける考えを示した。適用が疑問視されている朝鮮学校についても、対象としない方針を明らかにした。
朝鮮学校は朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政面で強い影響を受けている。北朝鮮は日本に敵対的な姿勢を取り続けている。その傘下の学校であるという事実を見誤ってはならない。
朝鮮学校では、金正日・正恩父子の礼賛教育や独善的記述の独自教科書が使われている。文科相は拉致問題に進展がない状況下では「国民の理解が得られない」と説明した。当然の判断である。
教育委員会制度の改革やいじめ対策、道徳教育の充実など教育をめぐる課題は山積みだ。最近も教師の体罰が生徒の自殺を招く痛ましい事態も起きている。
学校や教委の事態掌握が遅れ、対応が後手に回ることに多くの国民が心配している。子供たちが安心して学校に通えることは、公教育が信頼される大前提だ。
教委の責任を明確にし、機動的な対応を可能とする体制づくりも重要である。まっとうな公教育体制が整えられるまで、教育再生の流れを止めてはならない。