【書評】習近平政権、経済崩壊、反日の行方。
大混乱と反日攻勢激化を予見
去る11月、習近平が中国共産党総書記に選出されましたが、まもなく誕生する日本の新政権においても、対中国問題は、最重要課題となるはずです。
本書は、中国の歴史、政治、経済を知り尽くしている2人が、習近平政権後の中国を予測、分析したものです。
過去、日本では「13億人という中国市場の魅力」がさかんに喧伝(けんでん)されてきましたが、じっさいには内需が年々減少している実態を紹介。その背景には、腐敗や汚職によって富と権力を握った「権貴(けんき)階級」が、海外に巨額の財産を持ち出している実例を挙げ、中国では中間層が生まれず、内需拡大が無理であることを実証的に解説しています。
すでに米国をはじめ、各国が中国から資本を引き揚げ始めており、中国が死守したい8%の経済成長はもはや不可能で、年間20万件ともいわれる暴動がさらにエスカレートすることは確実、経済と社会の崩壊が広がりつつあることを明らかにしていきます。
中国人民の爆発寸前の不満を解消し、中国共産党の正統性を保つ唯一の方法は、蔓延(まんえん)する腐敗の根絶や、権貴階級から特権を奪う政治改革しか残されていませんが、そもそも習近平自身が共産党高級幹部の子弟であり、江沢民をはじめとする権貴階級の後ろ盾によって総書記に就任した経緯から、それも不可能。
かくして政治的崩壊も加わり、習近平は任期を全うできず、中国は大混乱の時代に突入、日本への反日攻勢も激化していくと予見しています。(黄文雄、石平著/徳間書店・1050円)
徳間書店 一般書籍編集部 明石直彦