震災の困難「思い馳せぬ日ない」
東宮御所でくつろがれる皇太子殿下と雅子妃殿下=3日、東京・元赤坂(宮内庁提供)
皇太子妃雅子さまは9日、49歳の誕生日を迎え、宮内庁を通じて感想を発表された。平成15年12月に帯状疱疹(ほうしん)で入院し、療養生活に入られてから今月で10年目となるが、「療養が長くなり、御心配をおかけしていることと思います」と言及。「快復に向けての努力を続け、四十代最後の年となるこれからの一年の日々を大切に過ごしていくことができればと思っております」とつづられた。
東日本大震災の被災者が困難な状況で生活していることについては、「思いを馳(は)せない日はなく、そのたび毎(ごと)に、とても心が痛みます」と述べられた。
「適応障害」の治療にあたる東宮職医師団は例年通り文書で見解を発表し、「十分な休養をおとり頂くとともに、私的なことからご活動の幅を広げていただくようお伝えしている」と説明。ご病状は回復傾向にあると考えているという。
今年は公的な活動を目的とする地方ご訪問が、16年以来8年ぶりにない見通しとなっている。医師団は、長女の敬宮(としのみや)愛子さまのご通学の付き添いを昨年末まで続けられたことなどにより、夏まで疲れが残ったことが背景にあるとみている。
雅子妃殿下、ご感想全文。
寒い季節を迎えましたが、昨年の東日本大震災により被災された多くの方々が、今なお住み慣れた場所を離れ、困難な状況の中で暮らしておられます。このことに思いを馳せない日はなく、そのたび毎に、とても心が痛みます。同時に、困難な状況にある被災地の方々に、日本全国から、そして海外からも様々な形で支援が届いていることを心強く思っております。どうか、必要なところ隅々にまで、温かい支援の手が届きますように願ってやみません。今後の復興のためには多くの課題を乗り越えていかなくてはならないと思いますが、関係者の努力により、一日も早く復興が進み、厳しい状況で過ごされている多くの被災者の方々の生活が改善され、安心して暮らすことができるようになっていくことを切に願っております。そして、被災された方一人一人の今後の幸せと御健康を祈りながら、これからも皇太子殿下とご一緒に、被災地の復興に永く心を寄せていきたいと思います。
昨年の震災は、被災地以外の地域に暮らす人々にも非常に大きな衝撃を与え、日々の生活や意識を変えることになるような大きな出来事でした。今、日本の社会は色々な意味で岐路に立っているように感じます。今後、将来への希望と自信を持って、望ましい社会の姿を見出していくために、皆で知恵を出しあい、痛みを分かちあいながら、しっかりと手を携えて進んでいくことが大切なのではないかと感じております。この意味でも、東北の被災地の厳しい環境の中で、被災地の方々や支援にあたる方々がお互いに心を寄せ合い助け合っている姿には、深く心を動かされます。こうした被災地でのたゆまぬ取り組みは、私たち誰もが持つ心の力を思い起こさせ、様々な所で厳しい状況に直面し乗り越えようとしている人たちの励みにもなっていると思います。そして、ロンドン五輪や障害者五輪における多くの日本選手の活躍やそこに見られた人々の絆の力、また、山中伸弥教授のノーベル医学生理学賞受賞を始めとする喜ばしい事柄に、私たちは大きな希望や勇気を与えられました。このような力をもとに、国民の皆様が力を合わせ、将来に向けての様々な課題に取り組んでいかれることを願っております。
天皇陛下には、今年2月に心臓の御手術をお受けになられましたが、御体調をご案じ申し上げるとともに、御手術の成功を心よりお祈り申し上げておりました。御手術後には、陛下ご自身のご努力と皇后様の献身的なご看病により、日々を重ねられるうちにご快復になり、大変安堵いたしました。そして、お元気になられましたことを心よりお喜び申し上げております。天皇皇后両陛下には、御公務のお忙しい毎日でいらっしゃいますが、呉々もお体をお大事になさっていただきますようにお祈り申し上げます。また、三笠宮殿下も夏にご体調を崩され、大変にご案じ申し上げておりましたが、御手術後、お元気にご退院になったことをとても嬉しく思い、引き続きお大事にお過ごしいただければと願っております。その一方で、6月の寛仁親王殿下の薨去は、大変残念なことでした。心からご冥福をお祈りするとともに、ご家族の皆様が悲しみから立ち直られ、お健やかにお過ごしになられることをお祈りしております。
一昨年来、皇太子殿下とご一緒に、愛子が安心して学校に通うことができるように力を尽くして参りました。御心配を頂いたことと思いますが、お陰様で、昨年の終わり頃からは、愛子も親の付き添いなしに元気に通学できるようになりました。5年生になってからは、学校の勉強も随分と大変になってきましたが、愛子が、お友達にも恵まれ、管弦楽部やバスケットボール部といったクラブ活動を含む学校生活や、英語の勉強など様々なことに意欲的に取り組んでいることは大変嬉しく、そのように愛子が成長していく姿を心強く思いながら、母親としてできるだけの手助けをしたいと思って過ごしております。両陛下には、愛子の成長を温かくお見守り頂いてきておりますことに心より感謝申し上げております。また、国民の皆様にも温かく心を寄せて頂いておりますこと、多くの方に愛子の成長を支えて頂いておりますことにも心より感謝しております。
私自身につきましては、療養が長くなり、御心配をおかけしていることと思いますが、国民の皆様より引き続き温かいお気持ちを寄せて頂いていることに、この機会に心から御礼を申し上げたいと思います。今後とも、お医者様をはじめ、まわりの方々からのお力添えを頂きながら、快復に向けての努力を続けていきたいと思います。そして、四十代最後の年となるこれからの一年の日々を大切に過ごしていくことができればと思っております。これまで、天皇皇后両陛下にお心遣いを頂きながらお見守り頂いてきておりますこと、そして、皇太子殿下にいつも傍らでお支え頂いておりますことに心より感謝申し上げます。
東北の被災地は二度目の寒い冬を迎えています。被災された方々の一人でも多くが、十分に温かい住まいで、人々の心の温かさに包まれてこの冬を過ごすことができますように心から願っております。