憲法改正問題が、原発や消費税と並んで衆院選の大きな争点に浮上している。憲法は国の根幹を成す最重要法規である。改正論議をさらに盛り上げていきたい。
第三極の日本維新の会の石原慎太郎代表はテレビ番組で、自民党から政権参画を要請された場合、憲法を改正することなどを条件に、前向きに対応する考えを示した。衆院選後の政界再編を見すえた発言である。
維新は公約の冒頭に「自主憲法制定」を掲げた。維新に合流した太陽の党の前身、たちあがれ日本は「自衛軍」を明記した自主憲法大綱案を4月に発表している。
自民党は同じ時期に出した憲法改正草案に「国防軍」を明記し、安倍晋三総裁はこれを公約の柱に据えた。
戦力不保持を定めた現行憲法9条の改正を必要とする点では、自民党と維新の主張に大きな違いはない。もう1つの第三極、みんなの党は公約で9条に触れていないが、4月に示した「憲法改正の基本的考え方」の中で、自衛権の在り方の明確化を求めている。
選挙後、これらの改憲勢力が発言力を強め、憲法改正を軸に政界が再編されるよう期待したい。
政権与党の民主党は、憲法について公約で、「憲法を活かし、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義を徹底」と書いているだけだ。野田佳彦首相は、自民党公約の「国防軍」明記を「乱暴だ」などと批判し、「憲法改正は争点ではない」と言い続けている。
だが、野田氏は、自著で「私は新憲法制定論者」と書いている。憲法改正論議から逃げず、自らたたき台を示したうえで、安倍氏や石原氏らとの改正をめぐる論戦に積極的に加わるべきだ。
衆院選で憲法改正が大きな争点になるのは、民主党(当時)の鳩山一郎政権が改正を問うた昭和30年2月の総選挙以来だ。だが、もう1つの保守政党、自由党と合わせても、改憲発議に必要な3分の2の議席に届かなかった。
「自主憲法制定」をうたった保守合同後の31年7月の参院選でも、自民党は3分の2を獲得できず、憲法改正は遠のいた。
それから56年後の今、軍拡を進める中国が尖閣奪取を狙い、北朝鮮がまたミサイル発射を予告している。国の守りを強化するための9条改正を含む憲法改正は、いよいよ喫緊の課題になっている。