「拉致でポイント稼ぎ」秘策も逆手に取られ。
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北朝鮮が、事実上の長距離弾道ミサイルの発射計画を表明した。金正日総書記死去1年の節目に、今年4月の発射失敗で失墜した金正恩体制の威信回復を狙っているとされる。野田佳彦首相は不測の事態に備えるよう関係各省に指示したが、実は直前まで、政府内の複数ルートで、日本人拉致問題の進展を、衆院選などに利用しようとする動きが見られた。
「平安北道東倉里の西海衛星発射場から、10日から22日の間に、実用衛星『光明星3号』を運搬するロケット『銀河3号』(長距離弾道ミサイル)を打ち上げる」
北朝鮮の朝鮮宇宙空間技術委員会報道官は1日、このような談話を発表した。朝鮮中央通信や平壌放送などが伝えた。談話は発射方向を「南方」としており、沖縄など日本領土上空を通過する可能性がある。
野田首相は発射予告を受け、5、6両日に北京で予定していた日朝局長級協議の延期を北朝鮮側に通告したが、外務省関係者は「北朝鮮にいいように振り回されている」といい、こう明かす。
「通常、政権交代もあり得る国政選挙の最中に、重要な外交交渉は避けるもの。現政権が外交的約束を履行できる保証はなく、政権が変われば次期政権の外交政策をしばるからだ。ところが、野田内閣は日朝局長級協議に乗り気だった。拉致問題の進展を衆院選の得点にしようとしていた」
「これ以外にも、野田首相や玄葉光一郎外相らの反対を無視して、政府高官が10月、北朝鮮の高官と北京で接触したうえ、一部高級官僚の中には、拉致被害者家族の横田滋・早紀江夫妻の訪朝を画策する動きもあった。いろいろ動いて、最後に北朝鮮にハシゴを外された形だ」
日本側をあざ笑っていたのか、朝鮮総連関係者は一部マスコミに対して、「(帰国できる拉致被害者の)名前が出せるかもしれない」「楽しみにしていて」などと期待を持たせていたという。
朝鮮半島情勢に詳しい元公安調査庁第2部長の菅沼光弘氏は「北朝鮮のミサイル発射予告は、韓国大統領選(19日投票)を強く意識したものだろう。日本はあまり関係ない。そもそも、北朝鮮は(政権交代もあり得る時期に)日朝局長級協議などやりたくなかった。野田内閣側が『衆院選前のサプライズ』を狙って前のめりだった。今回の発射予告で、北朝鮮は日本側に協議延期を言わせた。外交手腕は数段上と言わざるを得ない」と語っている。
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事実上のミサイル発射に踏み切る北朝鮮。狙いはどこにあるのか。
元韓国国防省で拓殖大学国際開発研究所の高永●(=吉を2つヨコに並べる)(コウ・ヨンチョル)客員研究員は次のように解説する。
「今年4月に行った衛星打ち上げの失敗を挽回する狙いがある。しかも、17日は金正日氏が亡くなってちょうど1年。発射のタイミングを12月10日から22日の期間に設定しているが、金正日氏の追悼式典という要素もある。神格化のプロセスの一環で、国内の結束を図りたいのだろう。また、韓国の大統領選挙が19日に実施され、対北強硬策を掲げる候補者を牽制する意味合いがある。米国ではオバマ大統領が再選を果たした。外交カードである『核とミサイル』を国際社会にアピールする思惑もある」
「夕刊フジ/ZAKZAK」