反対論者の「脅し」に根拠なし。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 






安倍発言で市場注目のデフレ対策。草莽崛起:皇国興廃此一戦在各員一層奮励努力。 









今、マーケット関係者は、総選挙でおそらく第1党になると目されている自民党の安倍晋三総裁の発言に注目している。ここのところ、ドル・円の為替レートが80円台に乗る円安に動いた理由は、一つには、自民党政権下で圧力を受けることを予想した日銀が、より積極的な金融緩和に踏み込むという期待があるからだ。

 安倍氏は、デフレ対策の重要性を強調し、特に日銀について「インフレ目標に賛成する人を総裁にする」「目標達成まで日銀に無制限に国債を買わせる」「日銀法改正も視野に入れる」と述べている。さらに、物価・成長率の上昇が不十分な場合には消費税率引き上げの見送りもあり得るという。

 金融緩和については、大別して、(A)「やるべきでない」(B)「やるべきだ」(C)「やっても効かない(副作用が大きい)」といったお互いに対立する意見がある。

 デフレ脱却には賛成者が多いから、当面はっきりさせておきたいのは、(B)(C)のいずれが正しいかだ。(C)の論者は、日銀が市中銀行へのマネー供給を増やしても、ゼロ金利状態では貸し出しに回らず、日銀当座預金の必要以上の残高が積み上がるだけで、効果がないという(かつての筆者はこの意見だった)。

 しかし、こうした場合でも、金融緩和を追加すると「将来のゼロ金利解除」が遠のくだろうという期待が働く「時間軸効果」のほかに、(1)日銀がリスクのある資産を買う(いわゆる「非伝統的金融政策」)(2)政府ないし日銀が外貨を買い実質的に為替介入を行う政策(3)政府が財政赤字を増やして貸し出し需要にもつながる有効需要を追加する(4)マネー供給を拡大すると際限なく通貨発行益が政府のものになるので通貨価値下落への期待が働く(5)高めのインフレ目標をはっきりさせると人々の予想に働きかける効果がある(2月には「1%」というケチな目標だったが、為替市場には少し効果があった)。

 つまり、金融緩和の手段はまだある。(C)は間違いなのだ。

 こういうと、金融緩和や財政赤字を拡大すると、「将来大変なことになる」と脅す人がいる。しかし、これらの典型的な弊害としていわれるのが長期金利上昇やインフレ、通貨安というものだが、現在、長期金利は低く、インフレではなくデフレに悩んでおり、円安ではなく円高で国内の産業や雇用が苦しい。先の脅しは、ぬるい風呂を「追い焚き」すると、いきなり沸騰するというような話なのだ。

 
 あとは、政治家が、官僚・日銀にごまかされないように、彼らをどうマネジメントするかだ。 
                    

                            (経済評論家・山崎元)