【産経抄】11月17日 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 









景気の神様は、民主党政権の退場をいまか、いまかとお待ちのようである。野田佳彦首相が衆院解散を宣言するや投資家は政権交代確実と読んで株は急騰し、超円高も緩和された。ことに株価は、ニューヨーク株式市場が下がっても東京市場が上がるという近年まれにみる逆転現象まで起きている。

 ▼田中真紀子文科相は「景気が悪く、たくさんの問題がある。大変な政治空白ができ、国家的ロスだ」とおかんむりだが、解散は極めて効果的な景気対策だった。現状維持こそが、国家的ロスにつながると市場は教えてくれた。

 ▼景気も病気も「すべては気から」とはよくいったものだが、投票日はまだ1カ月先だ。最近、選挙の神様がどんどん気まぐれになっているのも気になる。

 ▼7年前に「郵政民営化」のワンフレーズで小泉純一郎首相率いる自民党を圧勝させたかと思うと、3年前には有権者を「政権交代すればすべて良くなる」というペテンにかけた民主党に308議席も与えた。今回は、石原慎太郎前都知事と橋下徹大阪市長を主役とした第三極の動向が台風の目だ。

 ▼有力大臣自ら「バカ正直解散」と命名した民主党だって、奇跡の勝利を収める可能性はゼロではない。野田首相が党首討論でみせた迫力で、国民に訴え続ければ形勢逆転も夢ではない。

 ▼と慣れぬお世辞を書いたものの、民主党政権が3年にわたって積み重ねた失政は、首相のバカ正直さだけで償えるものではない。決戦を前に次から次へと「民主城」を捨てて、敵方に逐電していく議員が後を絶たないのが何よりの証拠だ。有権者は移り気だが、欺(だま)されっぱなしではない。今回も選挙の神様は、あっといわせる結末を用意しているはずだ。