犯罪的センス。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





【危機の正体】鳩山最高顧問復帰


草莽崛起:皇国興廃此一戦在各員一層奮励努力。 





「日本は琉球を中国から強奪した」-。中国研究の権威、中嶋嶺雄氏によれば、中国で初めて出版された「毛沢東選集」(1936年)に、このような記述があるという(『別冊正論』18号)。「収回琉球、解放沖縄」は中国共産党のDNAに組み込まれているということだ。その沖縄でオスプレイ配備や米兵の女性暴行事件で、反米・反基地の機運が高まっている。中国にとっては、もっけの幸いだろう。

 中国がアジアの海域への進出熱を高めているのは、アメリカのこの地域へのプレゼンスが低下しているからだ。アメリカは財政赤字から国防費を削減せざるを得ない。オバマ民主党政権で内向きにもなっている。アメリカのアジアにおける相対的地位の低下が中国を増長させているのだ。

 同時に、日本の民主党政権がアメリカとの信頼関係を損なったことも大きい。アメリカは「尖閣諸島を日米安保条約の適用範囲」と言いながら、「領土問題は当事者間で解決してほしい」と日本を突き放してもいる。中国はその「柔らかい脇腹」を突いているのだ。

 尖閣問題は長期戦になりそうだが、それだけの胆力が今の政権にあるとは思えない。中国も野田政権を相手にしない姿勢を示している。今後、さらに攻勢を強めるだろう。アメリカとの信頼関係も戻りそうもない。

 このような客観情勢や自らの能力の限界を冷静に考えれば、今、自分たちが政権に就いていることを恥じ、下野するはずだが、民主党はそうはしない。アメリカとの信頼関係を損なった当事者の鳩山由紀夫元首相を外交担当の党最高顧問に復帰させた。このセンスのなさは犯罪的でもある。

 私は衆院の解散はしばらくないと見る。出来もしないマニフェストを掲げて国民を欺き、これだけ国益を損ない、国民生活を疲弊させても、てんとして恥じない彼らのことである。それくらいの厚かましさは平気だ。それまでは「牛歩」戦術でグズグズするのではないか。

 民主党は衆院選のマニフェストをまだ作成していない。作れないからだ。必要な政策も先延ばしするだろう。それでいて人権侵害救済機関設置法案の閣議決定を行ったり、「女性宮家」創設に向けての動きは止めない。これらが政権末期の「イタチの最後っ屁」とならないことを願う。救いは安倍晋三氏が「強い日本」を掲げて自民党総裁に就任したことだ。政権交代後のプロの政治に期待したい。=おわり

 ■八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早大法学部卒業。同大学院政治学研究科博士課程中退。国家、教育、歴史などについて保守主義の立場から幅広い言論活動を展開。第2回正論新風賞受賞。現在、高崎経済大学教授、フジテレビジョン番組審議委員、日本教育再生機構理事長。著書に「国民の思想」(産経新聞社)、「日本を愛する者が自覚すべきこと」(PHP研究所)など多数。