「できない」自衛隊脱却を。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








【私と憲法】ジャーナリスト・桜林美佐氏


草莽崛起:皇国興廃此一戦在各員一層奮励努力。 


防衛ジャーナリストの桜林美佐さん(桐原正道撮影)

私が防衛・安全保障問題に取り組もうと思ったきっかけは、自衛隊を取り上げるCS放送番組に出演したことだ。子供のころからインパールで戦死した警察官の祖父に関心があり、旧軍の戦友会に顔を出していたところ声がかかった。それ以前は情報番組などの制作をしていて、自衛隊とは縁がなかった。

 だが、取材で分かった今の自衛隊は、予算縮減、人員削減と問題だらけ。法的な縛りも多く、何かあると法律を作って対応するが、憲法の枠を出られないので、作れば作るほど窮屈な法律が増える。その法律が錯綜(さくそう)し混乱を招いている。

 例えば、海外の災害救助に国際緊急援助隊として派遣される際、武器が携行できないので、先に治安状況を調べる。すると、中国など他国より出遅れて、存在感が薄くなる。旧軍がいいとは言わないが、やはり制約が多すぎる。

 私自身も講演で「自衛隊はあれもできない、これもできない」と「できない話」ばかりしている自分に気づくことがある。昔の人から見ると「自衛隊は国を守るためよりも法を守るためにあるのか」と映るようだ。

 もちろん、憲法を変えればすべてが良くなるのかというと、そうではない。「できない」といわれていることすべてが憲法のせいでもない。最後に必要なのは政治決断だ。ただ、自衛隊を国軍と位置付け、現在の「これはしてもよい」というポジリストから、「これだけはしてはいけないが、それ以外はOKだ」というネガリストに変える憲法改正は必要だ。それが世界の軍隊の標準だからだ。

 また、改正条文の文言は、あれこれ書かずシンプルな方がいい。書かなければ理解できないのは、国民の未成熟さの表れ。条文をどう読み込むかという作業の方が大事ではないか。

【プロフィル】桜林美佐

 さくらばやし・みさ 東京都生まれ。日本大卒。平成4年からフリーアナウンサー、番組ディレクターを経てジャーナリスト。現在、防衛省の「防衛問題を語る有識者懇談会」メンバー。著書に「奇跡の船『宗谷』」「誰も語らなかった防衛産業」など。42歳。