【私と憲法】戦後問題ジャーナリスト・佐波優子氏
「“一旦緩急あれば”の精神が大事」と訴える佐波優子氏(瀧誠四郎撮影)
先人の思いを引き継いで
短大在学中から遺骨収集に取り組み、先の大戦について勉強していくうちに憲法に関心を持つようになった。インパール作戦で戦った元兵士は「私は戦争で死ぬなんて嫌だと考えていたが、実際に戦地で弾が飛んできたときに、急に銃後の家族を意識した。自分が弾を受け止めることで家族が救われるのなら、ここで死んでも構わないと思った」と話しておられた。そして「死んだ戦友たちの国を護(まも)る気持ちを若い人に受け継いでほしい」とも。その言葉が予備自衛官を目指すきっかけになった。任用後、訓練で銃を持ったとき私も背後に守らねばならない多くの人の存在を感じた。
以前、海外派遣の自衛隊員を乗せた船が出港する際、大勢のご家族が見送る場所で反対派がデモをした。横断幕には「憲法違反」「自衛隊は人殺し」といった言葉があった。自衛隊員はそうした言葉に慣れているかもしれない。しかし見送りに来た両親はどんな気持ちになったか。わが子に「お父さんは人殺しなの?」と思われてしまった父親の自衛官はどんなに悲しかっただろう。
多くの消防団員が、仕事を持ちながらも消防活動に従事する理由を「自分の街を自分で護るため」と答える。それを憲法違反という人はいない。そういった意識が地域レベルから国へと広がればいいと思う。
9条によって日本の国防力がそがれてしまうことが一番の問題。現状では、万が一の国難の際に自衛隊は手も足も出ない可能性がある。
対外的に「日本を攻めることはリスクが高い」と見せつけることが大事で、きちんとした国防力を身につけられるよう、改憲は必須だ。また、かつて教育勅語(ちょくご)にあった「一旦緩急あれば国のために駆けつけて自分の力を尽くす」という精神を現代的な形で憲法に盛り込むことが大事だろう。
【プロフィル】佐波優子
さなみ・ゆうこ 埼玉県生まれ。桐朋学園芸術短期大卒。平成13年以降、ミャンマー、ロシア、硫黄島などで遺骨収集活動に参加してきた。「祖父たちの戦争体験をお聞きする孫の会」および「シベリア抑留の真実を学ぶ会」の代表。日本文化チャンネル桜のキャスターも務める。予備陸士長。33歳。