【40×40】東海大教授・山田吉彦
中国は、1971年に尖閣諸島の領有権を主張して以来、着実に東シナ海侵出を進めてきた。特に2010年以降、実力行使に出ている。同年9月には漁船を海上保安庁の巡視船に体当たりさせ、翌年には漁業監視船「漁政」、本年3月には、海洋監視船が領海を侵犯した。海洋監視船の領海侵犯は今月18日、24日にも行われている。お人よしの日本人が「尖閣諸島の問題を棚上げ」にしている間に、東シナ海における活動域を拡大したのだ。危機感を募らせた石原慎太郎東京都知事は尖閣諸島を都が買い取り管理する意思を表明した。中国にとって石原都知事の言動は予想外だった。
中国は、時間をかけて東シナ海戦略を進め尖閣諸島獲得を目指していた。しかし、石原発言に焦り侵略のスピードをアップした。まずは、民主党政府に圧力をかけ都による購入を妨害し、尖閣諸島の利用計画を止めさせた。そして、大量の海洋監視船を日本領海に送り込んだ。次は、千隻もの大漁船団を送る予定だった。そして、日本国政府による尖閣国有化に抗議するため反日デモを行った。このデモは、中国の自作自演だった。福建省では、デモの参加者に100元(約1200円)の対価が支払われていたという証言がある。また、デモ参加者が当局の手配したバスに乗って現れ、警察官の指示のもと活動していた様子が放映された。
しかし、官製デモを組織した中国当局は、みごとに自爆してしまった。反日デモだったはずが暴徒化し日系スーパーを襲撃し略奪の限りを尽くした。また、日中合弁の自動車工場を焼き打ち、日本食レストランを襲った。この野蛮な行為がメディアを通し世界中に伝えられたのだ。なにより中国当局にとっての失態は、デモを反政府活動に利用されたことだ。
毛沢東の写真を掲げ平等を訴え、薄煕来(元重慶市書記)の復帰を求め、さらに共産党の施設に投石する者まででた始末だ。石原都知事に振り回された中国政府は、焦りにより国内世論を見誤った。日本は、中国の動きをとめ東シナ海の平和を取り戻す絶好の機会を得た。まずは、日本の正当性を国際世論に理解してもらう必要がある。それは、政府の役割だ。