【古典個展】立命館大教授・加地伸行
中国各地において大規模な反日デモが起こり、一部は暴徒化。早速、親中派は「憂うべきこと」などと言うが、ピントはずれ。独善的な国家と民度の低い国民との八百長デモではないか。それを憂えるとは、りっぱな〈内政干渉〉。ここは、彼らがどう始末をつけるのかお手並み拝見だ。国家・国民両者の諸能力を計れる絶好の絵巻物である。
もっとも、中国の警察は政府のマッチポンプのため扇動したり鎮圧したり裏表で忙しいのはお気の毒。
それに比べて、日本の警察は信頼できる優秀な組織であることを実感した。と言うのは、8月、拙宅に事件発生。老生、人さまの恨みを買うような言動はなかったつもりであるが、なんと拙宅の生け垣や玄関付近に、魚の骨などを投げこまれることが続いた。
やむをえず、所轄の旭警察署に電話相談したところ、交番はもちろん地域担当の刑事がすぐ来訪、実に行き届いた対応をしていただいた。以降、夜中のパトロール報告書をときどきいただき、感謝している。
被害者の老生の経験では、現場の警官は誠実で信頼できる。日本人のこういう〈いい話〉を知ってゆくことが、どこやらの反日デモなど低級な国家・国民に対する優越感を醸し出すことになるだろう。
いい話と言えば、最近、凄(すご)い本を読んだ。藤堂具紀(ともき)『最新型ウイルスでがんを滅ぼす』(文春新書)。
タイトルを見ると、なんだか怪しげな感じではあるが、著者は東大教授であるので、まずは正統派の成果と見てよかろう。
同書は、がん治療法として手術・放射線・抗がん剤・免疫の4大療法があるので、まずその内容と長所・短所とを紹介する。
次いで、第5の治療法として、著者の研究成果であるウイルス療法を説明する。大筋はこうだ。著者の発見した〈或(あ)るウイルス〉をがん患者に投入すると、そのウイルスはがん細胞の内部に入りこみ食い荒らして破壊する。その後、さらに次のがん細胞の中へ入りこみ…となって全滅させ、大勝利というわけである。
この〈或るウイルス〉は、そのあと人間の体内に住みつくが正常細胞に対してはおとなしくしている。仮に増殖したとしても、口内ヘルペスという病気になる程度であり、その治療法は確立されており簡単に治るので心配御無用とのこと。
フーンと唸(うな)った。ホンマかいな。しかし論旨明快、しかもウイルスを特定しているではないか。
とあればその実用化となるが、これが大変らしい。治験と言って人体試験をしたり研究をさらに深めるための費用が厖大(ぼうだい)であるが、それを捻(ひね)りだすのに苦労しているとのこと。
なぜなら、こういうとき、ふつうは薬品会社が協力するが、ウイルス療法でがんが簡単に治ると困る。会社としては、10年、20年と飲み続ける薬の開発を優先とのこと。
ならば、国家が直接に研究開発をせよ。もちろん国家の特許とし、まともな国には安く提供しよう。反日の国には提供拒否だ。それこそ真の抑止力である。
与党も野党も、党代表者はこういう遠大な戦略の一つでも示してみよ。要は志と心構えとなのだ。「国には常強なく常弱もなし」(『韓非子』有度篇)
(かじ のぶゆき)