北が拉致認め10年。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 









日朝首脳会談 全員帰る日まで、戦いは続く。






「死亡」「未入国」根拠なし


 北朝鮮の金正日総書記が日本人拉致を認めた日朝首脳会談から17日で、10年を迎える。被害者5人とその家族が帰国を果たしたが、残りの被害者12人について、北朝鮮側は「死亡」「入国していない」との主張を続けている。その説明には数々の矛盾点があるばかりか、客観的証拠は一切ない。政府は12人についても生存を前提に早期帰国を求めている。






襲撃、仕事斡旋…


 政府認定の拉致事件は12件。事件は、昭和52年から58年までに発生した。

 犯行形態は2つに大別される。一つは帰宅途中などに、北朝鮮工作員に突然襲われ、連れ去られるパターン。中学校での部活を終え、帰宅途中に拉致された横田めぐみさん=拉致当時(13)=や、デート中だった蓮池薫さん(54)、祐木子さん(56)夫妻の事件などがこれに該当する。

 もう一つは、北朝鮮工作員が仕事を紹介するなどと持ちかけ、だまして北朝鮮に拉致する手口。「転職先を紹介する」といって誘い出され、宮崎県の青島海岸から拉致された中華料理店員、原敕晁(ただあき)さん=同(43)=や、欧州留学中に「市場調査の仕事を紹介する」とだまされた有本恵子さん=同(23)=らがこのパターンだ。


成りすまし、教官…


 「日本人を拉致し、その日本人になりすませ」。原さん拉致の実行犯、辛光洙(シン・グァンス)容疑者(83)は金総書記から指示を受け、原さんを連れ去った。事件後、日本に戻り、原さん名義の運転免許証や旅券を取得。原さんに成りすまして工作活動を続けていた。「背乗(はいの)り」と呼ばれる手法だ。

 被害者を工作員の教育係として従事させるのも拉致の目的のひとつ。1987(昭和62)年の大韓航空機爆破事件の実行犯、金賢姫(キム・ヒョンヒ)元工作員(50)は、「李恩恵(リ・ウネ)」こと田口八重子さん=同(22)=から日本人化教育を受けたと証言している。

 有本恵子さんらは北にいる日本人と結婚させる目的でよど号グループによって拉致されたと、捜査当局はみている。


改竄、偽遺骨…


 平成9年2月に横田めぐみさんの“拉致疑惑”が表面化すると、同3月、被害者8人の家族が「家族会」を結成、奪還運動が始まった。被害者救出を求める署名数はわずか1年で100万人を突破。現在、その署名数は約933万人(8月31日現在)に達した。

北朝鮮側は一貫して「拉致はでっちあげ」としていたが、14年9月17日の日朝首脳会談で、金総書記は小泉純一郎首相(当時)に対し、拉致を認め謝罪した。被害者5人の生存も伝えられたが、8人は「死亡」、2人については「入国していない」とされた。

 蓮池さん夫妻、地村保志さん(57)、富貴恵さん(57)夫妻、曽我ひとみさん(53)の5人はその年の10月15日に帰国。2年後には、5人の家族が日本に戻った。

 首脳会談後に政府は、曽我さん親子と田中実さん=同(28)、松本京子さん=同(29)=を追加して拉致被害者と認定した。

 北朝鮮側が「死亡」とした被害者の「死亡確認書」などの書類にはいくつもの改竄(かいざん)の跡があり、日本政府は「死亡を証明する真正な書類が一切存在しない」としている。被害者の遺骨も一切なく、横田めぐみさんについては別人の遺骨を提供してきた経緯もある。

 帰国した被害者の証言と、北朝鮮側の説明に矛盾が生じるたびに、北は説明を修正してきており、日本政府は公式に「北朝鮮側の主張を受け入れることはできない」と表明している。



草莽崛起:皇国興廃此一戦在各員一層奮励努力。 
北朝鮮側から横田めぐみさんが「死亡した」との連絡を受け、涙を流しながら会見する母、早紀江さん(右)と父、滋さん=平成14年9月17日、東京都千代田区の衆院第1議員会館(大山文兄撮影)


草莽崛起:皇国興廃此一戦在各員一層奮励努力。 





帰国した被害者はいま。




大学講師、公務員 子供たちも就職


 10年前に帰国した拉致被害者5人は現在、地元の市役所などで勤務しながら、ほかの拉致被害者の帰還を祈っている。平成16年に日本に戻った5人の子供7人もそれぞれ成人し、社会人として生活を送っている。

 新潟産業大講師の蓮池薫さん(54)は翻訳家、作家としても活躍。21年には帰国後に訪れた韓国での体験などをつづった『半島へ、ふたたび』で新潮ドキュメント賞を受賞した。妻の祐木子さん(56)は新潟県柏崎市の非常勤職員として働いている。2人の子供たちは柏崎市外で就職している。

 地村保志さん(57)は福井県小浜市の職員、妻の富貴恵さん(57)は福井県嶺南振興局の嘱託職員として勤務。3人の子供も福井県内で働く。

 曽我ひとみさん(53)は新潟県佐渡市の職員として働きながら、一緒に拉致された母、ミヨシさん=拉致当時(46)=救出のため、署名活動などに参加している。曽我さんと北朝鮮で結婚し、脱走米兵として軍法会議で不名誉除隊となったチャールズ・ジェンキンスさん(72)は、佐渡金山の展示施設で勤務し、2人の子供も佐渡市内に就職した。



特定失踪者「濃厚」73人



「うちの子も」北で目撃証言


 政府認定の拉致被害者とは別に、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない人たちがいる。拉致被害者と家族の支援組織「救う会」から分離した「特定失踪者問題調査会」が調査を進めている行方不明者たちだ。

 その多くは10年前の日朝首脳会談後、家族から救う会に「うちの子も北朝鮮に拉致されたのではないか」といった問い合わせがあった人たちだ。

 平成15年1月の調査会発足から、これまでに特定失踪者として登録されたのは約470人を数える。

 このうち、北朝鮮国内での目撃証言などがあった失踪者については、調査会が「拉致濃厚」としており、その数は73人に上る。

 平成18年に政府が拉致被害者として認定した鳥取県米子市の松本京子さん=拉致当時(29)=も以前は「拉致濃厚」とされた特定失踪者だった。

 政府も特定失踪者について拉致の可能性があると判断。過去の日朝実務者協議で、特定失踪者の安否について照会したが、北朝鮮側は「入国の事実はない」と拉致を認めていない。

 失踪者らには、職業や居住地などに一定の共通性があるケースもあり、調査会は分析を進めている。