小泉訪朝10年
2002年9月17日の小泉純一郎首相(当時)の北朝鮮訪問から間もなく10年。官房副長官として同行した安倍晋三元首相は時事通信のインタビューに応じ、当時の状況や拉致問題の対応について語った。
-「小泉訪朝」を振り返ってどう思うか。
訪朝の意義は、北朝鮮側に拉致の事実を認めさせ、謝罪させ、5人の被害者、最終的には家族も含めて日本に生還させるための壁を打ち破ることができたということに尽きる。ただ、(事前交渉が)「秘密外交」だったために総力戦になり得なかった。準備が十分だったのか、反省点はある。私が日朝平壌宣言の案文を見たのも(平壌行きの)飛行機の中だった。拉致について明示的な言及はなかった。(過去の植民地支配への)補償についても、いくつか意見を言ったが、そのうちに(平壌に)着いた。
-北朝鮮の金正日労働党総書記(故人)が拉致を認める確信は事前になかったか。
全然なかった。
-リスクの高い首脳外交だったのでは。
外交にリスクは付きものだ。政治家がリスクを取る決意をしなければ、困難な外交はできない。(訪朝は)小泉首相の英断だった。
-訪朝前に小泉首相とどんな話をしたのか。
私から「拉致問題は日本の問題だ。日本が強く主張しなければ一切進まない。妥協しないという態度で臨んでもらいたい」と話した。小泉首相もよく分かっていた。平壌宣言を見れば分かるように、賠償方法については事細かに書いてある。あのとき外務省は(拉致問題が全面解決しなくても)1カ月ぐらいで平壌宣言にのっとって国交を正常化させようとしていた。私はとんでもない話だと思った。
(2012/09/11-18:15)