天皇陛下、新生児医療にご関心。
雅子さま皇居へ…2回の「ご予定変更」
天皇陛下は5日、埼玉県川口市の医療機器メーカー「メトラン」を視察された。陛下は例年、産業振興に貢献する中小企業を訪問されている。今年は寛仁親王殿下の斂葬の儀のため、当初6月14日に予定していたご訪問を遅らせることとなった。
同社は新生児の肺への負担を減らした人工呼吸器を独自に開発した。国内の新生児集中治療室の約9割で使われており、救命率向上に繋がっているという。
5日は朝から気温が高く、日差しが照りつけていたが、陛下が到着される前から多くの市民が駆けつけた。到着時には日の丸の旗を持った市民らが拍手をして歓迎し、陛下は手を振って応えられた。
同社の新田一福社長はベトナム出身で、留学のため来日。祖国で起業を試みたが、ベトナム戦争とオイルショックが重なったため断念することになり、日本で起業し、帰化した。これまで国内であまり研究などが進んでいない分野に挑戦しようと、新生児用の人工呼吸器の開発に取り組み、現在では国内のトップシェアを誇るまでに成長した。
陛下は、新田社長の説明を受けながら社内をご見学。同社で開発した在宅医療用の酸素濃縮器はバッテリー駆動が可能だったため、東日本大震災の際に、従業員らで機器とバッテリーの在庫を集めてすぐに出荷したという説明を受け、陛下は「ずいぶん助かった人がいるのでしょうね」と話された。
同社の開発室では、従業員に「ずいぶん精密だから大変でしょうね」と話しかけられた。従業員が「多くの患者さんを助けることができるのでやりがいがあります」と話すと「多くの人に役立っているんですね」と応えられた。
新田社長によると、製品の説明をした際、陛下は新生児医療や人命救助に非常に関心を持っていたといい、「今後の日本の医療業界のために頑張ってください」と励まされたという。
陛下は1時間半ほど滞在し、同社を後にされた。朝よりも気温はさらに上昇していたが、陛下が帰られる際にも多くの市民が沿道に詰めかけており、「陛下お元気で」などと呼びかけて見送った。
皇后さまは4日、皇居内の紅葉山御養蚕所で、蚕の繭を初めて収穫する「初繭掻(はつまゆかき)」の作業をされた。6月28日に蔟(まぶし)と呼ばれるわらの網に入れた蚕が、糸を吐いて繭になったものを収穫する作業で、皇后さまは「しっかりとしたいい繭ができて」と感激されている様子だった。皇后さまは3センチほどの繭を丁寧に収穫された。
この日は気温が高かったため、皇后さまは「暑くなってきたけど皆さん大丈夫?」と養蚕所の職員を気遣われた。2階で育てている蚕の収穫作業のため、階段を上がってからも「暑いけど大丈夫かしら」と職員を心配して、自ら窓を開けられた。2階では繭の毛羽取りも行い、皇后さまは手際よく作業を進められた。
6月25日からタイ、カンボジア、ラオスの東南アジア3カ国を訪問していた皇太子さまは1日午後、政府専用機で羽田空港に帰国された。お住まいの東宮御所(東京都港区)の玄関では、皇太子妃雅子さまと長女の敬宮愛子さまが出迎えられた。
水色のワンピースに白いボレロを羽織った愛子さまは皇太子さまの車が到着すると、雅子さまとともに深々と一礼し、笑顔を見せられた。皇太子さまもリラックスしたご様子だった。
秋篠宮ご夫妻と長女の眞子さま、高円宮妃久子さまと長女の承子さま、次女の典子さまも、皇太子さまを出迎えられた。
帰国後、皇太子さまは、宮内庁を通じて「タイ国、カンボジア国及びラオス国の御訪問を終えて」と題する感想を文書で発表し、「一つ一つの日程を通じ、各国が今日ある姿に日本がその時代時代に関わってきたことを改めて確認できたことも、大変有意義でした」などと記された。充実した内容を表すように、ご感想は約3100文字にものぼった。
宮内庁の小町恭士東宮大夫は6日の定例会見で、「殿下はお帰りになって2、3日ちょっとお疲れがおありのようにも私はお見受けしましたけど、今はお元気でお過ごしです」と説明した。
皇太子ご夫妻は3日、今月30日に崩御されてから100年を迎える明治天皇のご事跡についての進講を両陛下といっしょに受けるため、皇居・御所を訪問された。
当初は皇太子さまが単独で訪問される予定だったが、当日朝に急遽(きゅうきょ)雅子さまも同席されることが決まったという。皇居には皇太子さまが先に入られ、雅子さまは進講が始まる午前11時の少し前にお1人で入られた。
宮内庁関係者によると、両陛下とご夫妻は進講後にいっしょに昼食を取られる予定だった。だが、ご夫妻は結局、予定を早めて東宮御所に戻られたという。2回目の「予定変更」の理由について、小町氏は6日の会見で問われたものの、説明しなかった。
宮内庁は6月30日、桂宮さまが東京大学医学部付属病院(東京都文京区)に同日入院されたと発表した。一時38度台の熱があり、同病院で検査を受けたところ、炎症の指標となる数値が高いため、大事を取って入院されたという。
各宮家は今週もさまざまな公務を果たされた。
5日には、6月6日に亡くなられた寛仁親王殿下の「権舎三十日祭の儀」が港区の赤坂御用地内にある寛仁親王邸で行われた。その後、文京区の豊島岡墓地で、「墓所三十日祭の儀」が執り行われた。それぞれ、皇族方が参列された。
秋篠宮さまは3日、霞会館(東京都千代田区)で、山階鳥類研究所東日本地区賛助会員の集いに出席された。
秋篠宮ご夫妻は5日、東京国際展示場(東京都江東区)で、「第19回東京国際ブックフェア2012」開会式に出席された。
常陸宮さまは6月30日に皇居・神嘉殿の前庭で、大祓(おおはらえ)の儀に臨まれた。国民の罪や穢(けが)れを祓い清めるもので、6月と12月の末日に、男性皇族の代表が儀式に臨まれているという。
常陸宮ご夫妻は1日、東京アメリカンクラブ(港区)で、アメリカ合衆国独立記念式典に出席された。
久子さまは1日、山中旅館(東京都台東区)で「第35回日本の象牙彫刻展」高円宮賞審査会に臨まれた。5日には上野精養軒(台東区)で、ロンドン五輪フェンシング壮行会に出席された。
人工呼吸器の実演をご覧になる天皇陛下。左は株式会社メトランの新田一福社長
=5日午前10時32分、埼玉県川口市(代表撮影)
蚕の繭を今年初めて収穫する「初繭掻」の作業をされる皇后陛下
=4日午前、皇居・紅葉山御養蚕所(宮内庁提供)