【主張】台湾の尖閣侵犯
中国に続いて台湾の巡視船と遊漁船が尖閣諸島周辺の日本領海内に侵入した。遊漁船には、尖閣の領有権を主張する活動家らが乗船し、台湾巡視船は退去を命じる日本の海上保安庁の巡視船に対し、「ここは中華民国(台湾)の領海だ」とする掲示板を表示した。
これまでの漁船の領海侵犯や違法操業と異なり、台湾当局の明確な意思に基づく計画的な行動である。由々しき事態だ。
藤村修官房長官は「どんな目的であれ、領海に入ったことは絶対に認められない」と強い調子で非難し、官邸危機管理センターに情報連絡室を設置したことを明らかにした。日本の対台湾交流窓口機関、交流協会台北事務所も、台湾側の亜東関係協会に抗議した。
当然の対応である。引き続き、海保と自衛隊の緊密な連携による厳戒態勢を維持すべきだ。
台湾の巡視船は、東京都議らが尖閣諸島周辺を視察した先月下旬にも領海侵入している。台湾外交部は、この視察について尖閣諸島の台湾領有を主張した上で「一方的で不当な行動は慎んでほしい」と非難する声明を出した。
台湾が尖閣領有を主張し始めたのも、中国と同様、昭和43年に国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の調査で、付近の海底に大量の石油資源埋蔵の可能性が判明してからだ。その主張は法的にも歴史的にも全く根拠がない。
台湾の公船が尖閣周辺で領海侵犯したのは、平成20年6月以来、4年ぶりだ。中国公船の領海侵犯より頻度が少ないとはいえ、許し難い行為である。
台湾とは中国の軍拡などに対する安全保障面などで協力しなければならない関係にあるが、領土や海洋権益など国益や主権にかかわる問題では譲らず、やはり断固とした姿勢を貫くべきだ。
中国の尖閣奪取の意図が明白なうえ、台湾公船の領海侵犯で、日本固有の領土である尖閣が奪われかねない危険性がますます強まった。石原慎太郎都知事の尖閣購入計画に加え、野田佳彦政権も、尖閣の国有化や漁業基地建設などの有人化政策をはじめとする統治強化策の検討が急務だ。
尖閣に不法上陸した外国人を海上保安官が警察官に代わって逮捕できる改正海上保安庁法を今国会で速やかに成立させたい。領海侵犯した外国公船を強制排除するための国内法の整備も急がれる。