死に体の綱渡り経済運営・支那。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 






【緯度経度】北京・山本勲

http://sankei.jp.msn.com/world/news/120630/chn12063008110001-n1.htm




 中国が景気失速とインフレ再燃のはざまで難しい経済運営を迫られている。世界金融危機後の超大型景気浮揚策が招いたインフレ・不動産バブルの対策に追われているうちに景気が急失速し始め、今度はてこ入れ策を余儀なくされているためだ。「二兎(にと)を追う者は一兎(いっと)をも得ず」の例えもあるが、どうなるか。

 渤海湾に面する河北省秦皇島港は、石炭などエネルギー産品の交易では中国最大港だ。

 ところがここへきて引き取り手のない石炭が港内に山積みにされ、関係者が悲鳴を上げている。

 中国紙、第一財経日報によると今月中旬にその総量が942万トンと、史上最高を記録した。

 中国の産炭量は昨年35.2億トンと8年で倍増した。だが1~5月は15.6億トンにとどまり、年間で昨年をかなり下回りそうだという。

 原因は主要ユーザーの火力発電所や鉄鋼メーカーの需要不振にある。

 中国の電力使用量は4月に前年同月比3.7%増と過去16カ月で最低の伸び率だった。中でも工業用電力は1.6%増にとどまった。

上海証券報によるとこの結果、4月の工業生産は前年同月比9.3%増と、2009年6月以来最低の伸びとなった。世界経済の低迷で1~5月の輸出は同8.7%増と、伸び率を17ポイントも落とし、頼みの国内消費(実質11%増)も牽引(けんいん)力を欠いている。

 こうした内外需の不振が工業生産を落とし、ひいては港に石炭が山積みにされる惨状を招いたわけだ。

 一方、09年からの4兆元(約50兆円)景気対策と超金融緩和がもたらした不動産バブルの弊害も深刻だ。不動産の施工面積が販売面積の5倍に膨れあがり、5月末には完成住宅在庫の総面積が3億平方メートルと、前年同期比34%も急増した。

 政府はインフレが顕著になり始めた10年末に金融緩和の終了を宣言、利上げと銀行の預金準備率引き上げを繰り返してきた。

 だが昨年秋に景気後退が鮮明となり、年末に財政投融資の一部緩和や預金準備率引き下げに転じるなど、インフレと失速防止の“両にらみ”姿勢に転じた。

 しかし預金準備率の相次ぐ引き下げ(3回)にもかかわらず、不動産取引の低迷や輸出鈍化で今年1~3月の国内総生産(GDP)成長率は8.1%と、5四半期連続で減速した。

このままでは政府の年間成長目標7.5%の達成も危うい。これに慌てたか、国務院(中央政府)は先月後半から景気てこ入れ策を繰り出し始めた。

 まず鉄鋼大手、宝鋼集団や武漢鋼鉄の新工場建設申請を一斉に認可した。投資額は計約1340億元(約1兆7千億円)にのぼる。

 鉄鋼産業は深刻な過剰生産状態だけに批判の声も多いが、失速防止には「背に腹はかえられない」というところか。

 さらに今月7日から中国人民銀行(中央銀行)が3年半ぶりに金融機関の預金、貸出金利をともに0.25%引き下げた。再利下げの観測も多い。

 政府はこうしてモグラたたきのように引き締めと刺激の相反する政策をめまぐるしく繰り出している。

 しかし(1)内需主導の持続的成長を実現するための所得格差是正(2)政府・国有企業主導の腐敗が蔓延(まんえん)する非効率経済から民間主導の技術革新型経済への移行-などの政治経済一体改革が大きく立ち遅れている。

 このまま小手先の対策に追われていては、財政余力が尽きる数年後に大きな危機を迎えかねない。