西岡 力ドットコム より。
今韓国では「従北はだめだ」が多数の国民の共通認識となりつつある。「従北」という言葉は、趙甲済氏らの造語で、従来使われていた「親北」より、一層深刻な「北朝鮮 に従属している」という意味を内包している。4月の総選挙で13席の議席を得た統合進歩党が「従北」勢力の代表としていま批判にさらされている。特に比例代表で当選した李石基、金在妍議員らを「従北」勢力であることを理由に国会議員除名すべきとだという主張が良識的保守の中から高まり、大論争となっている。
この論争の中で、李石基、金在妍議員らは地下セクト「京畿東部連合 」のメンバーであり、同セクトが事実上、統合進歩党を支配しているという事実が暴露された。
日本では地下セクト「京畿東部連合 」について全く知られていない。彼らは2001年9月、忠清北道君子山に集まって北朝鮮 工作機関の指令に基づき「10年以内に『自主的民主政府と連邦統一祖国』を建設する」といういわゆる「君子山の約束」を決議している。まさに北朝鮮 工作機関の手先そのものだ。
遅ればせながらではあるが、韓国 大手新聞が「君子山の約束」のついて詳しく報じるのを見て、亡くなった李命英先生が繰り返し「君子山の約束」の危険性を語っていたことを思い出す。
ここでは改革者6月号に寄稿した拙稿からその点について詳しく触れた部分を転載する。
「京畿東部連合 」は全国規模の反政府組織「全国連合 」に加盟していた地域組織だが、現在、韓国 政界の従北勢力を事実上指導する地下組織となっている。
1980年代の韓国の反政府運動は大きくNL派とPD派に分かれていた。NLとはNational Liberationの頭文字であり、韓国 を米国の植民地と規定して民族解放を闘争の目標とするグループだ。この路線は完全に北朝鮮 と一致しており北朝鮮の主体思想 を信奉するという意味で主思派とも呼ばれた。なお、PDはPeople Democracy、人民民主主義の略で社会主義革命を目指す勢力だが、80年代後半以降、次第に力を落としていく。
1987年、NL派が主導したデモにより全斗煥政権が譲歩して大統領直接選挙と金大中 らの政治活動自由化が実現したとき、北朝鮮では選挙を通じた南朝鮮革命を目指すあらたな対南工作方針が立てられた。それにもとづき、1991年に韓国の反政府運動団体が総結集して全国連合が作られた。全国連合の活動家が金大中 政権時代の2001年9月、忠清北道君子山に集まって「3年以内に広範囲な大衆の組織化を通じて『民族民主政党』を建設し、10年以内に『自主的民主政府と連邦統一祖国』を建設する」といういわゆる「君子山の約束」を決議した。当然、北朝鮮の指令にもとづくものであろう。全国連合にはいくつかの派閥があったが権力争いに勝った主流組織が「京畿東部連合 」だ。
「君子山の約束」にもとづきPD派が作った民主労働党を「京畿東部連合 」を主軸とするNL派が乗っ取った。その民主労働党が今回、統合進歩党となり、盧武鉉派に乗っ取られた民主統合党と選挙協力を行ったという構図だ。
「君子山の約束」にもとづく北朝鮮 による韓国 乗っ取り工作は着実に進んでいる。昨年末に死んだ金正日は住民を餓死させながらも核ミサイル開発と韓国 への政治工作にだけは最優先で外貨と人材を投入してきた。今年12月の大統領選挙で野党統一候補が勝つなら、「君子山の約束」にいう「自主的民主政府」が実現することになる。
「自主的民主政府」は当然、韓米同盟からの離脱と連邦制による北朝鮮 との統一を任期内に実現させようとするだろう。在野の保守愛国勢力が街頭で激しい抵抗を見せ流血の事態は避けられず、軍の将校らが国家を守るために行動することもあり得ると、良識的保守のリーダー趙甲済氏らはくりかえし警告している。一部の専門家と保守運動の中で語られてきた北朝鮮 による韓国 政治工作の進展に関して、ついに一般国民が気づく契機を今回の総選挙は提供した。全国紙やテレビニュースで「京畿東部連合 」という地下組織の存在が報じられた意味は大きい。