「国を守る」民意を政策に。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 









【40×40】山田吉彦





5月後半、東海大学の教育訓練船「望星丸」に乗り、80人ほどの学生とともに北海道根室市を訪れた。大学のある静岡から根室への海路は、水温が20度を超える黒潮から、5度ほどまで冷える親潮の海流上を走ることになる。この日本の海の多様性を実感させることがこの航海の目的のひとつである。航海中、たびたびイルカ、鯨、アザラシなどに出合った。また、洋上から金環日食を見るというおまけつきの航海であった。

 50時間の航海を経て着いた根室では、ノサップ岬からわずか3・7キロしか離れていない貝殻島や歯舞群島を望むことができた。第二次世界大戦後、ソ連により奪われ、今もロシアが占領しているため自由に足を踏み入れることが許されない日本の島々だ。この研修では、北方領土の元島民の話を聞き、また、専門家から北方領土の豊かな自然が乱開発により崩壊しつつある現状の報告を受けた。学生たちは、この北方領土の現状を境界の町、根室を訪れることで知り、領土・領海の意味を考える契機となった。そして、帰港後は、日本の国の姿を考える学生が増えている。現代日本の社会では、領土問題を考える機会があまりにも少ない。

石原慎太郎東京都知事の都による尖閣諸島購入発言は、国民に中国に侵略されつつある東シナ海の現状を知る機会を与えた。そして、尖閣諸島の重要性を意識した約7万人もが10億円に上る浄財をこの島の購入のために寄付したのだ。このことに示されるように、尖閣諸島の購入すなわち、管理・利用は、東京都だけではない国民運動に発展している。

 石原都知事の発言は、国境問題に関する国民の意識を覚醒させた。この民意に日本国政府は速やかに反応しなければならない。国を思う国民の声を聴くことこそが、民主主義の原点である。政府は、東シナ海対策を急ぐとともに、北方領土、竹島など領土、領海に関わる問題に目を向け具体的な動きをとるべきだ。まずは、離島やその周辺海域の警備体制を整えるために海上保安庁法の改正を行い、国の安全を守る体制を充実させることが急務である。国を愛し国を守りたいと願う国民の意識を政策化することが、平和な国の礎となるのだ。

                                (東海大教授)