「リリース・プレビュー」-完成版は9~10月か
ソフトウエア大手の米マイクロソフト(MS)は31日、次期基本ソフト(OS)「ウィンドウズ8」の、より完成版に近い試験版「リリース・プレビュー」 を消費者向けに公開した。これはアップルの「iPhone(アイフォーン)」などの携帯端末がコンピューター市場を席巻する中で、主力ソフトの強化を目指す同社にとって重要な一歩だ。
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ウィンドウズ8について説明するマイクロソフトのバルマーCEO(5月、ソウル)
MSは数カ月前にウィンドウズ8の初期の試験版である「コンシューマー・プレビュー」を開発者や消費者向けに公開した。今回のリリース・プレビューの公開は、同社がソフトの形態や機能を確定したことを示している。同社や同社と取引のある一連のパソコンメーカーや独立系のソフト開発者にとってこの試験版は非常に重要な意味を持つ。
ウィンドウズ部門のスティーブン・シノフスキー社長は、「ウィンドウズ8のリリース・プレビュー公開という節目を迎えられてとてもうれしい」と述べた。
アナリストたちはリリース・プレビューの公開を受け、ウィンドウズ8の完成版の公開時期が9月か10月になるとみている。リリース・プレビューはMSのウェブサイトからダウンロードできる。
MSがウィンドウズ8をほぼ完成させたことで、関心はMSのパートナーであるデル、レノボ、ヒューレット・パッカード(HP)といったウィンドウズ8搭載のパソコンを製造するメーカーに移ることになる。台湾で来週開かれる見本市「コンピューテックス」では、多くのパソコンメーカーがウィンドウズ8の搭載を前提としたタッチスクリーン式のノートパソコンやその他の新端末を初めて披露する予定だ。
ウィンドウズ8については、過去15年間以上で最も大幅な刷新が行われた。デスクトップ・パソコンのほか、ノートパソコンやタブレット型端末上でウィンドウズが指で操作できるように設計されるのは今回が初めて。MSはウィンドウズ8が同社の市場影響力保持につながることを期待している。この背景には、MSの技術が市場シェアをつかめずにいる携帯電話やタブレット型端末などが使われる場面が増えているという事情がある。
ウィンドウズ8の搭載されたパソコンやタブレット型端末の見た目や触り心地は、多くのスマートフォン(多機能型携帯電話)や「iPad(アイパッド)」などのタブレット型端末のユーザーにとってなじみのあるものだ。ウィンドウズ8の「スタート」画面には、電子メール、写真、音楽、それにウェブ閲覧といった主要機能を示すアイコンが集まっており、カラフルな「タイル」のように表示される。このタイルは情報の一端を示すようにデザインした。例えば、天気情報のアプリのタイルは、クリックする前からその日のシカゴの天気予報を示すようにカスタマイズできる。
MSが「メトロ」インターフェースと呼ぶ外観が最初に採用されたのはウィンドウズ7で、その後ゲーム機の Xboxやスマホ向けOSにも採用されている。アップルがiPhone、iPad、パソコンのマックで行っているのと同様に、MSもウィンドウズ8投入によって、MSソフト搭載のパソコン、タブレット型端末、それに電話を同じような感覚で操作できるようにすることを目指している。
またウィンドウズ8では、ウェブ閲覧のインターネット・エクスプローラー、インターネット上へのファイル保存、電子メール、音楽ストリーミングやその他のソフトウエアを刷新した。タッチスクリーン端末の能力をフル活用するためだ。(ウィンドウズ8は従来のデスクトップ型パソコンでも使えるため、従来式に慣れている人も安心だ)
MSはリリース・プレビューで、ニュース、音楽、スポーツ、それに旅行向けの新しいアプリをお披露目した。これはMSがウィンドウズ8の新機能を生かすために独自に開発した。例えば、スポーツアプリを使うと、バスケットボールのサクラメント・キングスのファンはチームのスコア、選手情報、順位表、それにニュースを1つの画面で、しかもカラフルな写真付きで見ることができる。
アマゾン・ドット・コムのキンドル、ガネットの新聞USAトゥデー、さまざまな形式のファイルをネット上で作成・保存できるアプリのエバーノートなどの外部企業もまた、ウィンドウズ8向けのアプリの製作に取り組んで いる。
このリリース・プレビューの公開に際しては不手際があった。MSは1日前のブログにリリース・プレビューについて投稿したが、投稿はすぐに削除された。MSが投稿を消す前に、ニュースブログサイトのザ・ネクスト・ウェブがこのMSのミスを見つけた。
MSはこのほかウィンドウズ7ユーザー向けのアップデート情報を発表した。来年1月末までにウィンドウズ7搭載パソコンを購入したユーザーは、ウィンドウズ8へのアップグレードが推定小売価格14.99ドル(約1200円)で行えるという。