このところ生活保護問題がクローズアップされている。不正受給問題については手続きの厳格化、給付額が増えていることについては支給額の10%カットなどの方針が打ち出されている。
しかし、受給者の増加や、受給者に対する視線の厳しさの背景には、デフレによる雇用悪化や給与水準の低迷もある。手続き厳格化や支給額カットだけで問題は解決するのか、より効果的な対策はないのだろうか。
まず、不正受給の現状を知っておこう。2010年度の不正受給は2万5355件、128億7426万円だった。近年は増加傾向だが、それでも生活保護費は全体で3・3兆円なので、不正受給は0・4%しかない。
各国の生活保護の実情も知っておいたほうがいい。日本の生活保護費は、国際的にみても、給付総額は少なく、保護されている人も驚くほど少ない。1999年の数字であるが、日本、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、OECD平均の公的扶助総額の対GDP比は、それぞれ0・3%、4・1%、2・0%、2・0%、3・7%、2・4%だ。現時点でみても日本は0・7%程度である。
また、日本、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、OECD平均の公的扶助を与えられている人の総人口に占める比率は、それぞれ0・7%、15・9%、2・3%、5・2%、10・0%、7・4%だ。現時点でみても日本は1・4%程度にすぎず、先進国の中で際立って低い数字である。なお、生活保護者一人当たりの金額は先進国の中でも高い。
とはいっても、日本の生活保護者数が増えているのは事実だ。民主党への政権交代時の2009年9月の生活保護者数が175万人だったが、今年2月には210万人と35万人も増加している。
この増加はほとんどデフレで説明可能だ。デフレになると所得が失われ、失業が増える。このためインフレ率と失業率の間には逆相関があり、この関係はフィリップス曲線として知られている。
これと同じ説明であるが、1990年からの生活保護者増加率とインフレ率には明確な逆相関関係があり、相関係数は▲0・9となる。具体的にいえば、インフレ率が▲1%だと、生活保護者は5%(10万人程度)増加する。
こうした分析から、個別例をもって生活保護費を10%カットすることに合理性はない。むしろ民主党政権になってデフレ脱却をしなかったので、経済苦境に陥り、それが生活保護者の増加を招いた公算が大きいので、デフレから早く脱却することこそ重要な課題である。
インフレ率が2%程度になれば、生活保護者が10%程度減少するので、生活保護費の削減は可能である。
その上で、不正受給の噂が絶えないのは、役所側のチェック体制に問題があるのだろう。これを解決するために必要なことは、役所の縦割り行政をなくすことだ。国民背番号の導入とともに歳入庁を創設し、社会保障(徴収・給付)と税を一体として運用しなければいけない。そうすればフロー所得とストック資産の把握ができて、不正給付は減るだろう。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─━─
増税している場合ではない!経済活性のために復興国債300兆円発行しろ!日銀は金を刷れ!
在日外国人及び、不正受給者の生活保護受給即時停止!