国連ではシリア制裁めぐる協議。
国連のシリア監視団は30日、縛られて殺された13人の遺体が29日夜、発見されたと発表した。処刑型の虐殺による死者数がさらに増えた。一方で国連安保理はシリアに対する国際制裁の可能性について協議した。
監視団のムード団長の発表によると、発見されたのは同国東部のデリゾールで、遺体は後ろ手に縛られており、一部は至近距離から頭部を撃たれたようだという。
ライス米国連大使は、アナン国連・アラブ連盟特使の調停が失敗し、それに続いて全面的な内戦が勃発した場合の最も公算が大きいシナリオについて、各国は安保理の枠外で行動を起こす可能性があるとして、軍事介入の可能性を示唆して警告した。
同大使は「このバスは動けなくなりつつあるようだ」とし、「このことは、次に起こること、シリア当局および安保理によって取られる措置が事態の方向を決定付ける可能性が高いことを意味している」と強調した。
ロシアは30日の早い時点で、シリアに対する制裁への反対を改めて表明した。インタファクス通信によると、ガティロフ・ロシア外務次官は安保理の前に、「(シリアの)状況に影響を与えるために安保理が新しい措置を検討するのは時期尚早だと信じている」と述べた。同次官は、安保理が27日に採択した、ホウラでの攻撃を非難する声明―拘束力のない声明―は「シリアに対する十分に強力なシグナルだ」としている。
国連外交筋によると、安保理制裁決議の草案作りはまだ始まっていない。これには武器禁輸、シリア首脳部に対する金融・旅行面での制裁が盛り込まれる公算が大きいという。毎年数百万ドルの武器をシリアに売却しているロシアは特に武器禁輸に反対すると見られる。
フランスのオランド大統領は29日、6月1日に予定しているプーチン・ロシア大統領との首脳会談で、国連の制裁を支持するよう圧力をかける方針を明らかにした。
今回のシリアに対する厳しい動きは先週のホウラ虐殺事件を受けたものだ。この事件では多くの子どもや女性などほとんどの犠牲者が至近距離から撃たれており、、国連当局者は身の毛もよだつ処刑だと述べた。ホウラ地域の住民によると、この虐殺はアサド大統領に忠誠を誓う武装組織が行ったという。
ロシアの姿勢から見て、安保理の行動の余地はほとんどないようだが、一方でアサド大統領に対する個別の批判は強まっている。トルコ外務省は30日、シリア外交官に72時間以内にトルコから出国するよう求めたことを明らかにし、前日に大使の退去を求めた西側諸国に足並みをそろえた。かつてアサド大統領と親密な関係にあったトルコのエルドガン首相は「残虐行為に直面して口を閉ざしているのも残虐行為にほかならない」と強調した。