天皇陛下がエリザベス女王の戴冠(たいかん)式に臨まれた昭和28年は、日本が戦後、国際社会に復帰した翌年だった。初めて海外を訪れた19歳の陛下は戴冠式を通じて、女王だけでなく、以後長年にわたって親交を続けることになった各国の王族たちとも出会われた。宮内庁幹部は「戴冠式の場は、陛下が一貫して進めてこられた国際親善の『原点』となった」と話す。
「戴冠式への参列と欧米諸国への訪問は、私に世界の中における日本を考えさせる契機となりました」
陛下は、還暦を迎える平成5年の誕生日会見で、こう振り返られている。
昭和28年、陛下は英国に1カ月余り滞在し、女王と英語でご会見。戴冠式の70カ国余りの出席者の中で2番目の若さで、席順はノルウェー、ギリシャなど欧州の王族らに続く13番目だった。今回の出発前には「荒廃した国土から訪れた者として、訪問した多くの国の人々が豊かに生活していることに胸をつかれ、そのことが深く心に残りました」と思い出を語られている。
宮内庁によると、健康状態が懸案となる中、陛下は今回の訪英を強く希望されてきた。別の宮内庁幹部は「女王の招待と、2月18日に心臓を手術したこととは無関係」とするが、結果的に手術で抜本的な不安が解消され、訪英に支障がない状況が生み出された。
陛下は、即位して間もない平成2年の記者会見で「今後の世界はあらゆる国々が国際社会の一員として、国と国との交渉とともに、人と人との交流を通じて人類の幸福のために、住みよい世界を作っていかなければならない」と、天皇として国際親善に臨む決意を述べられている。
今回の訪英は、そうした「人と人」レベルからの国際親善を目指してきた、陛下のお取り組みの集大成ともなっている。
(ロンドン 芦川雄大)
昼食会が開かれるロンドン近郊のウィンザー城で、
エリザベス女王に迎えられる天皇、皇后両陛下=18日(PA)