天皇、皇后両陛下がエリザベス女王の即位60周年祝賀行事出席のため、16日から英国を訪問される。天皇陛下は2月に心臓の手術を受けられたばかりだ。しかし、訪英は陛下が強く実現を希望されていたという。
できるだけ余裕ある日程で、エリザベス女王をはじめ参列する各国の国王、女王、王族方と旧交を温め、親善を深めていただきたい。
日本の皇室と英王室は歴史的に特別な縁で結ばれている。
大正10(1921)年に当時の皇太子、後の昭和天皇が訪欧のさい、最初に訪ねられたのが英国だった。日本とは政治的に同盟関係にあったこともあり、熱烈な歓迎を受けた。昭和天皇は国王ジョージ5世から立憲君主制について学ばれたという。
その後も両国の交流は続き、戦後の昭和28年、皇太子時代の現天皇が昭和天皇の名代としてエリザベス女王の戴冠(たいかん)式に参列された。また46年には昭和天皇が英国を再訪され、50年には女王が初めて日本を訪問した。
さらに天皇陛下は戴冠式を機にベルギーなど欧州各国の王室との親交を深められている。こうした経緯から、祝賀行事への参列と各国の国王、女王との再会に強い意志をお持ちだという。
一方、英国など各国国民は、125代にわたり連綿と続いてきた日本の天皇や皇室を畏敬の念を持ってみている。
加えて今年は、東日本大震災からまだ1年しかたっていない。両陛下は12日にも被災地を訪問された。これほどまでに心を砕いておられることも、各国民に伝わっているはずだ。天皇陛下が体調も万全でない中、祝賀行事に参列されるとなれば、大きな感銘を与えることは間違いない。
そのことだけでも、大震災から立ち直ろうとしている日本への理解を深め、皇室と王室、そして国民同士の絆を強めることになるだろう。
とはいえ、心臓の手術を受けられて間もない外国訪問である。4月末に受けられた診察では術後の回復は順調で、ご訪問に問題ないことが確認された。
ご高齢ということもある。ご無理は禁物だ。周囲としてもゆったりとした日程で参列されるよう気配りしてもらいたい。笑顔でエリザベス女王らと再会されるニュースを国民は待っている。